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生薬の話

キハダを植樹して

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 山々の緑は一層濃く、木々の間を風が通り抜ける清々しい季節が訪れています。

 弊社では、5月17日にキハダ植樹を行いました!今年は、木祖村の鳥居峠ふもと、及び、やぶはら高原スキー場付近の山林と2ヵ所に植樹を行いました。天候に恵まれ、多くの皆様にご支援、ご協力いただき、今年も無事に植樹ができましたこと、心より感謝申し上げます。

植樹後2週間の様子

 さて植樹から約2週間経過した先日、鳥居峠ふもとの山林に、植樹後の生育状況確認と植樹マップづくりのため行きました。晴れて清々しく、暑いほどの天気の日でした。一本一本様子を確認すると、苗木は概ね元気な様子でほっとしました。

 今年もキハダを含む混交林植樹として、全7樹種を植樹しましたが、それぞれ下記のような状況でした。

  

◎キハダ:まだ新芽を出していないものがほとんどでした。キハダは芽を出す前の苗木を植樹しました。無事に活着し、新芽が芽生えることを願うばかりです。

◎アカメガシワ:丸い葉が元気にひらひらとしているものが多くありました。アカメガシワは、既に葉の出た苗木を植樹しました。無事に根付き、葉に水分が届いているようです。

◎ハンノキ:緑の小さな葉がほとんどの苗木に出ていました。植樹時点では、冬芽が少し発芽した程度でしたので、ぐんと大きくなったようです。こちらも無事に根付いているようです。

◎クヌギ:クヌギは薄茶色の枯れ葉のついた苗木を植樹しました。昨年紅葉した葉が落葉せずそのまま残っていたようです。それらの枯葉は全てなくなり、冬芽がよく見えました。一部の苗木はまだ白みを帯びた小さな新芽を出していました。

◎カリン:植樹時に既にわしゃわしゃと出ていた葉が、そのまま元気にしていました。

◎ヤマモモ:同様に植樹時の苗木に既に出ていた葉が、そのまま元気にしていました。

◎ウルシ:ウルシは昨年の植樹地内に植樹したため、今回は様子を確認しませんでした。

    

 根本に穴が掘られ、倒れていた苗木が5本ほどありました。植樹し忘れたのかな?と思うほど、きれいな直径10cm程度の穴の横に、原型を保ち横倒れしていました。野ネズミや野ウサギでしょうか。今一度スコップで穴を掘り、植樹し直しました。また、天然更新のキハダもその後、元気に成長しているものが多くみられました。いずれの木々も大切に成長を見守っていきたいと思います。

パッチワーク状混植と巣植えの組み合わせによる植樹

 さて、今年の混交林の植樹でも、これまでと同様「パッチワーク状混植」という植樹法を実践しました。そして、そのパッチワーク内の一部で「巣植え」という植樹法も実施しました。これにより「パッチワーク状混植」と「巣植え」を組み合わせた植樹法となりました。

     

 巣植えとはどのような植樹法でしょうか?それは「苗木を列状に植栽するのではなく、複数の苗木を一ヶ所に群(巣)として植栽する方法」です。同じ樹種の苗木を、3~5本で一組とし、一つの箇所に密植します。密植の程度は例えば30cm間隔などかなり近いです。一方で組間の間隔は、少々広く取ります。

  

巣植えのメリットとして下記のような点が挙げられています。

 

<巣植えのメリット>

・苗木間の競争により成長を促進する

・耐風性や雪害抵抗性を向上する

・植樹、下刈りなどの作業効率が良い

長い目で見ることの大切さ

 弊社では、現実的には難しいことを承知しながらも、植樹する苗木の全てが成長することを願って植樹を行っています。巣植えは、全てを成長させず、競争の後に淘汰されることを前提とした植樹法のように感じられ、これまでの植樹では実施せずに来ました。

 今年の植樹の前に、長野県林業大学校 教諭 岡田光弘先生より、混交林の植樹についてご指導いただきました。この際に、巣植えの実践を強くお勧めいただきました。広葉樹の植樹において一般的によく取られる手法であり、下刈りで誤伐する可能性が減ること、組間の間隔を広く取ることが可能となり成長に良いこと等をご説明いただきました。先生のご指導において一貫してご教示いただいたのは「長い目で見る」ということです。短期的、且つ、個別の結果に左右されるのではなく、長い目で見て、森全体が良くなることを目指した方が良い、とのお話をしていただきました。このことは大変心に残りました。お話を伺いながら、一度も行ったことのない巣植えを短絡的に否定するのではなく、自ら実践し、その後の様子を長年の歳月をかけて見守り、総合的な観点で考察すること、その過程を経て学びをいただくべきだと考え直しました。今年の混交林の植樹地は広大ではなく、元々苗木同士の間隔を広く取ることができません。このため巣植えにしなくとも、いずれにしても、苗木がある程度成長した後に競争は生じてしまいます。また確保した苗木が余りそうだという現実的な理由もありました。これらのことから、一部において巣植えを実施することを決めました。

様々な観点から物事を見る

 キハダ植樹の当日、作業を行いながら、ご参加いただいた株式会社柳沢林業 代表取締役社長の原薫様とお話をさせていただきました。この時、巣植えにもお話が及びました。原様は「密植すると、1本は成長し、残りは成長しないかもしれない。しかし通常の手法で、間隔を開けて苗木を植えても、全部が成長しない可能性もある。競争して淘汰、ということではなく、共に助け合って成長し、命をつなぐとも考えられる。成長せず死んでしまった苗木は無駄だった、ということではなく、周りの成長を助け、自らの役割を果たし、次の世代に命をつないだということではないか」とお話をいただきました。様々な林業の現場で実務を重ねられ、木々と向き合われてきた原様から、大変深い、心に残る考え方をお聞きしました。無駄な命は一つもないこと、命の長短ではなく役割を果たしたか否かも大切であること、与えられた場所で懸命に生きているだけで良いことをしているのだ、ということなど、人生観にもつながる素晴らしいお考えをご教示いただいたと思いました。そして、岡田先生と同じく、長い目で森をみつめることの大切さを教えていただきました。

  

 植樹後の森を観察していると、苗木一本、一本はいとおしく、どうしても短期、個別の事象で一喜一憂してしまいます。しかし、長期的、且つ、全体最適の目線で森を見守ることの重要性を改めて感じています。自然の営みの中で人のできることは限られていますが、木々は一度植えた場所から動くことができないため、大変大きな責任を伴う作業であると思います。このため、植樹前にしっかりと計画を立て、植樹地の環境・地形などを考慮し、各苗木に適した場所、植樹法を定められているかしっかり精査することが大切と思います。そしてひとたび植樹した後には、自然の力に委ね、学びをいただく気持ちで森を見つめていくことが重要と思いました。

 今年も大きな学びをいただいて、植樹が終わりました。キハダのつなぐ様々なご縁と、皆様のご支援、ご協力に心から感謝しております。

  

日野製薬株式会社

代表取締役社長 石黒和佳子

出典:林野庁ホームページ

   奈良県「春日山原始林における後継樹育成方法(案) 」

   造林技術研究所「森づくりの技術」


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