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薬食同次元

初めてのキハダ餅

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明けましておめでとうございます。本年もどうぞ健やかな一年となりますように心からお祈りいたします。

  

さて「一年の計は元旦にあり」と申します。今年も、百草百草丸の主原料であるミカン科の落葉高木キハダについて学びを深め、社員で協力して実作業を行い、国内産生薬を用いた薬づくりに向けて進んでいきたいと考えています。本ブログも、新年第一回目はキハダで開始したいと思います。

  

先月半ばの雨の降る朝、木祖村のお世話になっている方から「今日来れん?これからキハダ餅かくよ」と明るい声で連絡をいただきました。キハダ餅は話には聞いたことがありますが見たことも食べたこともありません。今年作る時はぜひとも連絡くださいね、と以前からお願いしていました。昨日から雨で外の作業が出来ないので、キハダ餅を作ることにしたそうです。今日を逃してはならない!と朝の予定を片付けて大急ぎでお宅に向かいました。

  

玄関を開けると、甘いミカンのような良い香りがぷーんとして、びっくりしました。「良い香りですねぇ」と言うと、「キハダ餅をかいている時にうちに来る衆は皆そういうわ」と笑って言われました。

  

台所では、キハダ餅が既に作られていました。大きな鍋が二つあり、一つにはキハダの実を煮出したエキスが、もう一つにはキハダ餅が入っていました。キハダ餅を見るのは初めて。もう興味津々です。キハダ餅はぷるぷると柔らかく茶色をしていました。そして柑橘系の甘い香りがします。

  

「食べてみましょ」と言って、作ったばかりのキハダ餅を木のへらですくって、食べさせていただきました。するとおいしい!ミカンのような香りと甘さの奥にほんの少しの苦みがあります。そしてなめらかで柔らかいお餅です。食感は「ういろう」や「すあま」に似ていますが、そのもっと柔らかい感じ、でしょうか。木曽の南部や岐阜県には「からすみ」と呼ばれるお菓子がありますが、そのような感じです。キハダの実を生で食べた時のようなピリピリ感は一切なく、香り、甘みと苦みが絶妙です。「とにかくキハダ餅が好きでね、あの苦みが何とも美味しいんだわ」と常々伺っていましたが、ようやくその意味が分かったように思いました。

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さて、キハダ餅は木祖村の小木曽地区では古くから食べられてきました。その伝統のキハダ餅の作り方を教えていただきました。

  

1. キハダの実を煮出してエキスをつくる

薪をくべた達磨ストーブの上の大きな鍋に、キハダの実を煮出した茶色の液(エキス)が入っていました。よく乾かして硬くなったキハダの実を枝ごと鍋に入れて、水で煮出したそうです。枝を少し(1cm程度)入れるのがミソだそうで、それによってほのかな苦みが増しておいしくなるそうです。

一回煮出すと、乾燥したキハダの実が水を吸って、丸く元の通りになるそうです。そのエキスを別の容器にあけて、二回目、三回目まで煮出すそうです。三回目まで煮出すと、黒いキハダの実が白くなるとのこと。一回目から三回目までのエキスを鍋に戻して、数時間弱火で煮詰めて濃いエキスにするのだそうです。

百草の製造工程と似ていて面白いです。百草の製造工程でも、キハダの樹皮を水で煮出した後に、煮詰めて濃いエキスにします。

  

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2.キハダの実エキスに米粉、そば粉と砂糖を入れてかく

エキスの入った鍋にふるった米粉、そば粉と砂糖を少しずつ入れて、木べらでかき混ぜて餅にしていくそうです。だまが出来ないようにかくのが一仕事で、奥様が粉を入れる担当、ご主人様がかく担当をされているそうですが、冬の寒い日でも汗をかいてしまうとのことでした。

そば粉は入れない家もあるそうですが、少量(米粉の0.5割程度)入れるとなめらかでつるっとした感じになるとのことでした。

  

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「キハダ餅は昔はこの辺では皆作ったよ、若い衆は「ずく」がないから、はい、つくらんけどね」と伺いました。「ずく」とは信州弁で、惜しまず働く力や根気を示します。こんなにおいしいのだから作らないのはもったいない、と思いますが、一方でつくる作業は実の採取から始まって1ヶ月はかかります。キハダの実は隔年結実で2年に一度程度しか生りません。また実は高所に生ります。その実を採ってきて、3週間ほど乾かして、一日かけて煮出して、翌日にエキスと粉を混ぜて餅にする、というのは大変なことです。しかし、キハダ餅は木祖村の貴重な食文化です。「ずく」は大してありませんが、つくり方をしっかり覚えて今度は自分たちで作れるようになりたいと思います。また、粉を工夫してこれを何かにした方が良い、とのアドバイスもいただきました。考えてみたいと思います。

  

なお、今回教えていただいたお宅では、キハダ餅が大好きで、一年中食べられるように乾燥して粉にして保管されています。クッキングシートの上に薄くのべて、乾かした後、粉砕機で粉末にして保管すると悪くならないとのことです。更に今年はキハダの木が「生り年」で実が沢山採れたため、来年キハダ餅を作る用に保管しておくことにしたそうです。キハダの実はそのまま保管すると虫が食ってしまうそうで、ニンニクのかけらと一緒に袋に入れて保管することにしたとのこと。それも見せていただきました。自然のものをうまく活用した知恵と工夫にいつも頭が下がります。

  

今日いただいたキハダ餅は、まだほんのり温かい状態でしたが、「冷たくなるともっと美味しくなるから持って帰ったらいいわ」と帰りがけに沢山持たせていただきました。本当に有難いことです。雨の日でしたが、心も軽く明るい気持ちで、会社まで戻ってきました。

  

寒い日々が続きます。どうぞお体に気を付けて良い一年の始まりをお過ごしください。

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以上

出展:全国方言辞典


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