生薬の話
食中毒(食あたり・水あたり)
当社の隣地に"三寸あやめ"の花が咲きました。耐寒性があるのですね。何もしないのに毎年冬を越してこの時季に紫色の花を咲かせるのです。
さて、いよいよ本格的な夏の到来です。
「食中毒」に気を付けて暮らすために、今回は食中毒を引き起こす細菌やウイルスのこと、その治療や予防について調べてみました。
食中毒とは?
「食中毒」とは、食中毒を起こすもととなる細菌やウイルス、有害な物質がついた食べ物を食べることによって下痢、腹痛、発熱、嘔吐などの症状が出る病気です。
傷んだものを食べてしまったことで起こる「食あたり」は食中毒のことで一般用語、食中毒は医学用語とのことのようです。
「水あたり」は水を飲んでお腹を壊してしまうことです。細菌やウイルスに汚染された水を飲んだ時やカルシウムやマグネシウムなどのミネラルの多い硬水を飲んだ時に引き起こされます。日本の水は軟水が多く、細菌や金属類の水質基準が定められているので水道水を飲んでも感染症のリスクはあまりないのですが、海外旅行の際には、十分注意が必要です。
感染症とは?
感染症とは、病原体(病原微生物)が体に侵入し、症状を呈する病気のことです。
病原体は大きさや構造によって、細菌、ウイルス、真菌、寄生虫 に分類されます。
この病原体は感染症を引き起こす原因微生物ですが、体に侵入しても、症状が現れる場合と現れない場合があり、感染症に罹るかどうかは、病原体の感染力 と 体の抵抗力 のバランスで決まります。人間の体には非常に多くの細菌が住みついており、互いにバランスを保ち病気を引き起こすことなく一定の細菌叢(細菌集団・腸内フローラ・マイクロバイオーム)を形成し健康を保っています。この生理環境が崩れた時に感染症を発症します。
私たちの住む地球上には、食中毒を起こす病原微生物だけでなく、多くの病気の原因となる病原微生物が生存しています。細菌では、炭疽菌、結核菌、破傷風菌、コレラ菌、ジフテリア菌などです。ウイルスでは、インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、コロナウイルス、ヘルペスウイルス、HIVなどが代表的なものです。
感染経路は?
病原体が体の中に侵入する経路には、垂直感染と水平感染があります。
垂直感染は、妊娠中又は出産の際に病原体が赤ちゃんに感染するものです。
水平感染は、感染源が周囲に広がるもので、接触感染、飛沫感染(飛び散った飛沫を吸い込む)、空気感染(空気中を漂う微細な粒子を吸い込む)、媒介物感染(汚染された水、食品、血液、昆虫、動物を介して)があります。
食中毒を起こす主な細菌とウイルス
食中毒は主に病原微生物である細菌やウイルスよって引き起こされます。
食中毒には、夏場に多くみられる「細菌性食中毒(細菌性胃腸炎)」と、冬場に多く見られる「ウイルス性食中毒(ウイルス性胃腸炎)」があります。
症状の激しさや発症までの時間は細菌やウイルスによって異なります。
食中毒を引き起こす細菌としては、サルモネラ菌、カンピロバクター、黄色ブドウ球菌、腸炎ビブリオ菌、ボツリヌス菌、病原性大腸菌(O-157)などがあります。ウイルスには、ノロウイルス、ロタウイルス、E型肝炎ウイルスなどがあります。
細菌とウイルスの違い
細菌:目で見ることができない小さな生物です。通常1mmの1/1000の単位(㎛マイクロメートル)が用いられ、光学顕微鏡でみることができます。一つの細胞しかない単細胞生物です。栄養と水があれば自分と同じ細胞を複製(分裂)して増えていくことができます。自己複製能力があるのです。
ウイルス:細菌よりはるかに小さく㎛のさらに1/1000単位(㎚ナノメートル)が用いられ、電子顕微鏡が必要です。自分の細胞がないので自己複製能力がなく、他の生物の細胞に入り込んで生きていく寄生体です。他の細胞に入り込んだウイルスは、そこで自分を複製し増殖します。増殖したウイルスは、細胞を破裂させ飛び出し、さらに、他の細胞に入り込み、増殖していきます。ウイルスに入り込まれた細胞は次々死滅していきます。感染力はウイルスによって異なりますが、ウイルスにとっては、他の個体へ感染させ続けることが生き残るための必須条件なのです。
感染症の治療薬
細菌:一般的に抗菌薬(抗生物質:細菌の細胞などを攻撃できる薬)が有効です。細菌による感染症には様々な種類の抗菌薬があるので、医師が問診や検査をして治療に当たります。したがって、私たちは、医師の治療方針に従うことが大切です。抗菌薬の開発の歴史は、薬剤耐性菌の出現の歴史でもあります。人類は病原菌の根絶のため新しい抗菌薬を開発するのですが、病原菌もまた新しい抗菌薬に抵抗し生き延びようとするのです。近年では、抗菌薬が効かない薬剤耐性菌が現れ、治療が困難になり、特に抵抗力が弱っている高齢者は、命を落とすこともまれではありません。
ウイルス:通常、抗菌薬(抗生物質)は効力がありません。したがって、通常の風邪はウイルスが原因ですから抗菌薬は効きません。一部インフルエンザウイルスなどに有効な抗ウイルス剤(ウイルスの増殖を抑制する薬)があります。ワクチンは、無毒化したウイルスを体内に入れて免疫力を高め、実際に感染した時に急激にウイルスが増殖するのを抑えます。インフルエンザなどにはワクチンの予防接種が有効です。
家庭における食中毒の予防
- 細菌をつけない・持ち込まない
→調理前は手を洗う。まな板もよく洗う。調理用の箸と食事の箸は使い分ける。 - 細菌を増やさない
→新鮮な食材を選び、直ぐに食べるか冷蔵庫にできるだけ早く保存する。 - 細菌を殺す
→肉、レバーなどの食品は十分に加熱する。
食中毒の判断と応急処置
「食中毒かな」と思ったら、脱水症状を起こさないように水分補給をしましょう。
吐き気があるときは、吐きやすいように横向きに寝かせ、吐いたものが喉に詰まるのを防ぎましょう。食中毒の原因の細菌やウイルスを体外に出すことが大事です。
薬の服用は控えて様子をみますが、下痢が1日10回も続く、血便がある、激しい嘔吐や呼吸困難、意識障害などの重い症状がみられる場合は、受診しましょう。
乳幼児や高齢者は抵抗力が弱いので、症状が重症化しないように早めに受診しましょう。
日常の基本的な予防策
清潔を保ち、免疫力を低下させないことが大切です。そのため、栄養バランスのよい食事、基礎体力をつけること、規則正しい生活が基本です。
感染症は原因となる病原体や感染経路によって予防対策が異なりますが、十分な睡眠、ストレスをためないなどの予防策を習慣化しましょう。
帰宅時には必ず手洗いをして、部屋の換気をして、細菌やウイルスの生息しにくい環境づくりを心がけましょう。
トイレ後、おむつ交換時には、必ず手を洗いましょう。
百草・百草錠は、食あたり、水あたりに効果がある 昔からの薬なのですね。
はい。百草は江戸時代の後期から様々な胃腸疾患に用いられてきた民間伝承薬です。百草は「万病に効く腹薬(はらぐすり)」と言われ、キハダ(生薬名:オウバク)から水抽出したオウバクエキスのみを濃縮し板状にした乾燥エキス剤です。この百草を錠剤化し平成27年に発売したのが百草錠です。
百草・百草錠はオウバクエキスのみの単味(単一の原料)の生薬製剤ですが、このオウバクエキスの中には主成分のベルベリンの他に苦味成分や粘液成分が含まれ、これらの成分の相乗効果により胃腸機能の促進・回復を促していると考えられています。
ベルベリンは胃腸機能の促進作用や病原菌に対する抗菌作用や細菌性下痢の止瀉作用についての報告が多くあり、このベルベリンを主成分とする百草・百草錠は、食あたりや水あたりの症状を効果的に改善します。
また、単に下痢だけを止めるというよりは、弱った胃腸に働きかけ、腸のバランスを整え、便通を正常にし、胃腸全体を元の健康な状態に戻すように作用します。直接的に病原菌を攻撃する抗菌剤(抗生物質)によって荒らされてしまった腸内細菌叢の修復を助け、機能の正常化を促すのです。
人体に負担をかけない百草・百草錠は、日常の健康を維持するためのセルフメディケーションとして適しています。
百草・百草錠は、食あたりや水あたりの症状を改善させる胃腸薬です。
これから暑い夏になりますね。熱中症に注意して、外出時はできるだけマスクをして、人との距離を保つようにして、
『日本の夏に、ひと涼みを』をイメージすることで気分をリラックスさせて、元気に過ごしてまいりましょう。
参考:
ネットAMR(対策)-国立国際医療研究センター
ネット食中毒政府広報オンライン
ネット農林水産省(食中毒の原因と種類)
ネット東邦微生物病研究所(細菌とウイルス)
ウイルスSCIENCE PALETTE Dorothy Crawford著 本田恭介監訳(丸善出版)
陀羅尼助 銭谷武平 銭谷伊直著(薬日新聞社)
からだの中の外界 腸の不思議 上野川修一著(講談社)