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生薬の話

延胡索(エンゴサク)

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「日野百草丸」「百草丸プラス」に配合した「エンゴサク末」についてお話したいと思います。

「延胡索(エンゴサク): Corydalis Tuber

エンゴサクはCorydalis turtschaninovii Besser forma yanhusuo Y.H. Chou etC.C.Hsu(ケシ科papaveraceae)の塊茎で、成分にデヒドロコリダリンを含みます。径1~2センチの偏球形で、色は灰黄色~灰褐色です。ほとんど臭いはなく、苦い味がします。古くは、中国の唐時代から使用され、明代の「本草綱目」には、「血を活かし、気を利し、痛みを止め、小便を利す」とあり、我が国には、享保年間に伝えられたと言われています。エンゴサクは、鎮痙鎮痛薬として漢方処方の胃腸薬の安中散(あんちゅうさん)や婦人薬の牛膝散(ごしつさん)、折衝飲(せっしょういん)などに配合されています。

「エンゴサク」との出会い

エンゴサクを初めて知ったのは学生時代の生薬学の授業でした。

生薬では鎮痙鎮痛作用のある薬物はあまり多くなく、ましてブシ(ハナトリカブトまたはオクトリカブトの塊根)やロートコン(ハシリドコロまたはその他同族植物の根茎及び根)のように強い毒性を発現せず、血の巡りを良くしたり気の巡りを促したりして鎮痙鎮痛効果を現わす生薬であることを知り、深く印象に残っていました。

「新百草丸の処方検討」

平成18年頃であったと思います。当時、エンゴサク末を配合した百草丸を製造していたのですが、この百草丸はどんなに工夫をしてもきれいな球形の丸剤にならないのです。通常の百草丸は粘着性のある水あめ様のオウバクエキスに粉末生薬を混ぜ合わせて丸剤にするのですが、この百草丸はオウバクエキスではなくオウバク末に粉末生薬を配合する処方になっていました。製造経験からも「適切に加工した原料を適切な配合量で組み合わす」ことがすなわち成形性に優れた丸剤を作り出す秘訣であることが分かっていましたので、この百草丸の製造を一旦中止し、オウバクエキスにエンゴサク末と他粉末生薬を配合した新処方による百草丸の製剤検討を開始しました。

オウバクエキスに代表される健胃生薬等に整腸生薬のゲンノショウコ末、そして鎮痙鎮痛作用のあるエンゴサク末が加われば、「健胃・整腸・鎮痙鎮痛」の三つの相乗効果が期待でき、「自然の理に適った百草丸になる」「人体に寄り添うように改善を促す百草丸になる」と考えたのです。

「新百草丸の承認申請」

当時、オウバクエキスもエンゴサク末もその他の粉末生薬も使用実績があり、新処方とは言え容易に承認が取得できるものと考えていました。ところが、時代の進歩により承認審査が厳正なものとなっており、約6年の歳月を要しての承認取得でした。

承認申請に際しては多くの課題がありましたが、以下が心に残っています。

一:オウバクエキスの濃度と配合量の再検証

一:粉末生薬の選定と配合量の最適化の検証、

一:オウバクチンキの製法とコーティング量の算出

一:実生産規模での製造性の検証

特に「オウバクチンキの製法とコーティング量の算出」については、最終仕上げで吹き付ける二次コーティングのオウバクチンキを「成分」として位置づけ、苦味による健胃効果を数値で示すというもので、画期的であったと思っています。従来の百草丸のオウバクチンキはオウバクエキスの一部としての取り扱いだったからです。


さて、一般に鎮痙鎮痛作用で通っているエンゴサクですが、新百草丸へのエンゴサク末の配合量(成人一日の服用量)を350㎎としたことから、鎮痙鎮痛作用ではなく粘膜修復作用となりました。これは、国の承認基準の薬効区分が「粘膜修復作用」となっていることによります。


こうして多くの課題を乗り越えて新処方の百草丸が誕生しました。同じ目標に向かって邁進するチームワークの力が道を切り拓き、その成果としての承認取得でした。

「日野百草丸」「百草丸プラス」は「健胃」・「整腸」・「粘膜修復」の三つの働きが相互作用しより改善を促す「新しい百草丸」です。

「ヤマエンゴサクの花」

ヤマエンゴサク(山延胡索・ケシ科・キケマン属)を、社員が近隣の山で採取し、会社の空き地に植えたところ、翌年(平成27年春)花が咲きました。ヤマエンゴサクは、山野の林の下や土手に生える多年草で、地下に小さな球形の塊茎がついており、この塊茎が鎮痙・鎮痛薬として使用されます。以前は、日本の山野に自生するヤマエンゴサクやジロボウエンゴサクも薬用として使用されていましたが、現在は、中国原産のもののみが薬用として使用されています。

会社の空き地に一面に広がったヤマエンゴサクの一株を我が家の庭に植えてみたところ、翌年(平成28年春)花が咲きました。

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