薬草の花

タンポポ(蒲公英)【3月】

減る在来種、 全体に薬効成分

 春のリンゴ畑は一面タンポポの花に覆われ、黄色い絨毯のように見える。花の付け根を観察すると、 総苞外片(緑の部分)が下方に反り返っており、セイヨウタンポポであることが分かる。セイヨウタンポポは自家受粉で結実するため繁殖力が強く、総苞外片が反り返らない在来のカントウタンポポは今はほとんど駆逐されてしまった。現在、在来種は山里の一部で見かけるにすぎない。さらに、在来のタンポポとセイヨウタンポポの雑種が増えていると聞くと複雑な気がする。

 タンポポの語源は諸説あるが、タンポポの古名の「鼓草(つづみぐさ)」説を紹介しよう。子どもの遊びに、花茎の両端を細かく裂いて水に浸ける遊びがある。茎は水に入れると、あっという間に細片が反り返って鼓(つづみ)の形になる。そこから鼓草の名ができ、鼓を打つ擬声語からタンポポと呼ばれたとされる。タンポボの花茎の内部は裸の細胞で覆われているため、水に漬けると細胞は浸透圧の関係で膨張する。外壁は硬い繊維で覆われているため伸縮しないので、結果的に細く裂いた茎は外に向かって湾曲することになる。子ども達はいろいろなことをよく知っているものだ。

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 生薬の「蒲公英(ほこうえい)」はタンポポの根だが、全草に薬効成分を含む。成分は苦味質のタラクサシン、タラクサステロールなどで、葉にはルティンが含まれる。民間薬、漢方薬として広く用いられ、乳腺炎や化膿性疾患に使われてきた。また、日本では若葉は催乳薬として、 ヨーロッパでは健胃薬として知られる。また、他のキク科の植物でも言えることだが、タンポポは野菜としても利用される。

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Taraxacum sp. キク科タンポポ属
生薬名●蒲公英根(ほこうえいこん)
【ミニ図鑑】山菜としてお浸し、生でサラダに、乾燥した根はコーヒーがわりにも ▽花期 三~五月


出典:「信州・薬草の花」(クリエイティブセンター)

   市川董一郎(文)栗田貞多男(写真)