薬草の花

ナズナ(薺)【4月】

舂の七草、乾燥させれば生薬に

春まだ浅いころ、空き地で春の七草のひとつのナズナを摘み取った。

朝晩の寒さがまだ残る時期、ようやく伸び始めた根生葉は、初夏の明るい緑色とは異なって赤茶色を帯びている。

しかし、サッとゆでたら青味が増し、お浸しにして食べたら土臭いけれど素朴な味がして、田舎生活のよさが実感できた。初夏には丈高く成長し、春先のロゼット状の姿は想像もできない。

この時期、茎の基部に実をつけながら先端に向かって次々と白い花を咲かせる。

 
 ナズナは愛でる菜の意味から、「撫で菜」が転訛されたとされる。

また、別名「ぺんぺん草」は、果実の形が三味線の撥(ばち)に似ているから名付けられた。

そして、実がついた柄を根元に向かってちょっと引いて、耳元で振るときの音から「ガラガラグサ」とも呼ばれる身近な植物である。

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 開花期のナズナを、根をつけたまま乾燥したものが、生薬「薺菜(せいさい)」である。

漢方では、利尿、解熱、などを目的に、水腫、下痢、排尿痛、吐下血、月経過多、眼の充血などに使われた。

成分は、止血作用のあるプルシン酸の他に、フラボノイドのジオスミン、さらにコリンやアセチルコリンなどが含まれている。

ほかに子宮収縮や、抗アレルギー作用を持つ成分もあるようだ。

 ナズナを含むアプラナ科には、野沢菜、大根、白菜、ワサビ、カラシナなど多くの野菜が含まれる。

離弁花で四枚の花弁は放射対称で十字形をなすため、アプラナ科を十字花科と呼ぶこともある。

この科の植物は、美味しい、まずいを問わなければ食べられる種が多い。

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Capsella bursa-pastoris アブラナ科ナズナ属

別名●ペンペングサ

【ミニ図鑑】ナズナが薬草であるように、アブラナ科の葉菜類も何らかの薬効を持つと考えられる

▶花期 四月~五月

出典:「信州・薬草の花」(クリエイティブセンター)
   市川董一郎(文)栗田貞多男(写真)