薬草の花
ミヤマイラクサ(深山刺草)【4月】

※ミヤマイラクサ(深山刺草)の花期は7月~9月。
春、山菜の美味「エラ」としても
(写真①:茎や葉の表面にも鋭い刺が...)
子どもと里山に登ったとき、長ズボンを履いた私は何ともなかったのに、半ズボンを履いていた息子は「痛い、痛い」と大騒ぎしたことがある。足元を見ると、腰ほどに伸びたミヤマイラクサの群生地に踏み込んでいたのだった。この植物は茎や葉に無数の刺が生えていて、それが皮膚に刺さると、それも一ヶ所ではなく無数に刺さって、激烈な痛みが走るのである。
フランスの薬草研究家のメッセゲ氏は、イラクサの薬効を次のように説明している。イラクサの刺は蟻酸やヘビの毒に近い酵素などの化学物質を含むため、それが皮膚に刺さると、免疫を始めとする生体の活動が亢進する。ヨーロッパでは、子どもがこの草で傷だらけになって帰ってきたら「おまえはこれで、一生病気にかからなくて済む」と慰めるそうだ。これが民間療法の「イラクサ誘導法」である。さらに、茎や葉にはミネラルを始め消化機能を高めるセクレチンが含まれるため、それを調理して食べれば、健康増進のほかに消化器の病気に効果があるという。

(写真②:「エラ」とも呼ばれ、春先の若い茎は美味しい)
ヨーロッパのイラクサと、われわれの身近にあるミヤマイラクサは若干種が異なるが、含まれる成分にはそれほどの差異はないと思われる。ところで、信州ではミヤマイラクサは美味しい山菜として知られる。採取には手袋が必要だが、芽生えたばかりの柔らかい茎を折り取る。さっと湯に浸せば鮮やかな緑色に変わり、あれほど痛い刺は全く消失してしまい、こりこりした絶妙な噛みごたえは、山菜の王者である。
Laportea macrostachya イラクサ科ムカゴイラクサ属
【ミニ図鑑】葉や茎にふれるとチクチクとした刺激的な痛みが走る。しかし、湯通しすれば絶品に変身
▶花期 7月~9月

(写真③:上部が目立たない雌花。下部の粒々が雄花)
出典:「信州・薬草の花」(クリエイティブセンター)
市川董一郎(文)栗田貞多男(写真)


