薬食同次元
秋の恵みのキノコ
「今朝はマイナス2度だったよ、寒かったね」と先週弊社社員の皆で話しました。木祖村では、紅葉の色が日に日に濃くなり、朝晩ストーブが必要な寒さが訪れています。カラマツの多い木祖村では、山の斜面全体が黄金色に輝いています。色鮮やかな山々を見ることができるのも、あと1, 2週間のこと、厳しい冬も間近です。
さて、先日、御嶽山夏山のお疲れ様会が3年ぶりに開催されました。この時参加されていた方から「昔はこの時期に皆でキノコ採りをして楽しかったよ、イクチというキノコ知っている?あれは最高だよ。昔はキノコ名人がいてね。その人のところへ採ったキノコを持って行くと、はい、これは食べられる、はい、これはダメ、と選別してくれて、その後皆でキノコ鍋を作って食べたんだよ」というお話を伺いました。
イクチとはアミタケのことです。イグチ科ヌメリイグチ属のキノコで、アカマツなどのマツ林の地上に群生します。マツタケの1,2週間前に出るため、マツタケを探す際の目印にもなります。傘は黄褐色で分厚く、表面にぬめりがあり、裏面はスポンジ状で細かい穴が開いているのが特長です。イクチはつるんとしているため、なめこのように味噌汁やうどん、そば、酢の物にして食べられます。
山深い木曽では、キノコは秋の楽しみの一つです。春は山菜、秋やキノコ、と季節の恵みをいただくため、山に入る人も多いです。私の祖母も、飼っていた犬を連れて、よく山に入っていたと聞いたことがあります。マツタケ、ボウズダケ(コムソウダケ)、イクチ、コウタケ、クリタケ等々、おいしいキノコが色々あります。マツタケ以外は、いわゆる雑キノコと呼ばれるキノコ群ですが、それぞれが特徴的で、それぞれ美味しいです。
この秋いただいたキノコのうち、イクチとクリタケについて、食べ方の一例をご紹介します。
■イクチの酢の物
イクチは、前述のとおり、つるりとした食感で酢の物にぴったりです。
①土や葉を落とす
イクチは傘の表面にぬめりがあるため、採ってきたばかりの時は、土やマツの葉が沢山ついています。これを取り除くところから調理は始まります。まずは土の沢山ついた石づきを切り落とします。その後、ボウルに入れて、傘や柄の部分から、葉や土を丁寧に水で洗い落とします。
②切る
食べる大きさに切ります。
③湯がく
沸騰したお湯で湯がきます。湯がくと少し濃い栗色、または紫色になるのがイクチの特長です。そうならない場合は、別のキノコの可能性もあるとのこと。注意が必要です。お湯も茶色くなります。
④取り出して冷やす
湯がいたイクチを鍋から取り出します。鍋の底に水洗いで取り切れなかったごみが落ちていることがあるため、お玉でイクチをすくってざるにあけるのがおすすめです。取り出したイクチは軽く洗って冷やします。
⑤出来上がり
イクチの上に大根おろしを乗せ、ポン酢醤油をかけます。つるつるとした独特の食感が美味しいです。
■クリタケの炊き込みご飯
クリタケは、モエギダケ科クリタケ属のキノコです。その名の通り、栗色のキノコで、栗やコナラなどの広葉樹の倒木、切株や根の辺りから発生します。しめじより少し大きい程度の大きさで、シャキシャキした食感がおいしいです。
①土を落とす
土のついた石づきを切り落とし、ボウルに入れて、傘や柄の部分を水洗いします。
②切る
小さいものはそのまま、大きい傘は食べやすい大きさに切ります。
③米を洗い、水を加える
調味料を加える分と、クリタケから水が出ることを考慮し、水加減は通常炊く時より少な目にします。
④調味料を加える
米3合に対し、醤油大さじ2.5、酒大さじ1を加えます。また、オリーブオイルを少量(小さじ1程度)ふりかけます。
⑤キノコを入れて炊く
クリタケを加えて通常通り炊きます。
オリーブオイルの追加がポイントです。地域の食材を調理するプロの方の技からヒントをいただきました。少量を追加するのみで、キノコの風味が増し、美味しくなります。なお、クリタケをあらかじめ湯がいてから、炊く方もあるようです。土や泥が多く付着している場合はその方が良いかもしれません。また、クリタケのみではなく、他のキノコを加えてもおいしいです。
実りの秋となり、社員の皆が、家の畑で採れた農産物や手作りの味を会社に持ってきてくれます。先日、弊社の誰もが認める料理名人の社員が、赤かぶを使った一夜漬を持ってきてくれました。木曽といえば「赤かぶ漬け」が冬の風物詩として有名です。本漬けを始める前に、今年畑で育った赤かぶの様子を見るために、簡易に漬けてみたのだそうです。とうとう漬物を漬ける季節も近づいてきたことを感じました。
これから益々寒さが厳しくなります。冬に向けて、どうか体調管理に気を付けてお過ごしくださいますようにお願いいたします。