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薬食同次元

キハダのつなぐご縁 ~祖父のキハダ苗木~

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御嶽山では夏山を迎えました。多くのお客様が店舗にお越しになり、賑わいを見せています。私ども社員は、夏山でお客様をお迎えできることがうれしく、弾むような気持ちで店舗に勤務しています。毎夏と同じように「講社まねき」を掲げ、「木曽節」を流し、お客様をお待ちしています。

  

さて、前回に引き続き「キハダのつなぐご縁」についてお話したいと思います。

  

■祖父のキハダ苗木

昨年9月、木祖村に住む方から「親父が植えた大きいキハダがある。国道のバイパス計画で伐採する予定があるから、一度見にこんか?」とご連絡をいただきました。担当社員が現場へお伺いすると、沢筋に生えた大変立派なキハダでした。全部で3本あり、そのうち2本については、胸高直径が50~60cm、幹回りが150~190cmもありました。「百草丸の原料になるのであれば是非使ってほしい」とお話いただきました。様々な調整を経て、この7月16日に伐倒いただけることとなり、その翌日から皮むきをさせていただくこととなりました。

  

7月17日は、社員5名と地域おこし協力隊の方々3名にご協力いただき皮むきをしました。しかし大木のため一日では終わりませんでした。

  

7月18日、社員5名で引き続き皮むきを行うことにしました。現場へ到着すると、所有者の方が調度いらっしゃったため、お話をさせていただきました。するとこのキハダは、弊社の創業者の日野文平が、所有者の方のお父様に、苗木をお渡しし、植えていただいたものだと分かり、大変驚きました。

  

<お話してくださったこと>

・このキハダは日野文平さんがくれた苗木を、親父が植えたここへ植えたもの。

・日野文平さんと親父は、村の仕事の関係で良く知っていた。

・今から50~60年前のこと。自分も子どもだった。親父が大事に育てて自分が引き継いだ。

・元々5本苗木をもらって植えたが、今残っているのは3本だけ。

・国道の計画があるので見てもらったら、杉や檜は買い取るが、キハダは雑木だから買い取り対象にならないと言われた。切って他の木と一緒に処分してしまうと聞いたが、勿体ない。親父が大事に育ててこんなに大きくなったから、何かの役に立てたい。

・日野製薬の方で百草丸に使えるなら是非そうしてほしい。

  

創業者の日野文平は私の祖父です。祖父がキハダの苗木を近隣の方々に配布し、植樹をお願いしていたことは知っていました。しかしその苗木から成長したキハダを見たのはこれが初めてです。とても立派な大木で驚きました。これまで見たことのないような大きなキハダでした。そして当時の祖父は、40代と思います。現在の私とそう変わらない年の頃に、一生懸命に未来のことを考えて、周りの方々にキハダの苗木の植樹をお願いして回っていたことを考えると、泣けるような気持ちがしました。祖父の百草、百草丸にかける思いに改めて触れたように感じました。

  

キハダがないと百草、百草丸を作ることはできません。キハダは年々希少になり、現代の私どもは、国内産のキハダを求めて様々な取り組みを行っています。祖父は、若い頃、営林局に勤務しており、木や林業に大変詳しい人でした。将来キハダが必要になることを予見していたのかもしれません。長年の時を越えて、祖父が後世の私たちに何よりもの贈り物を残してくれたことに、祖父にも、所有者の方にもそのお父様にも感謝の気持ちで一杯になりました。私たちも未来の世代に何かを残さなくては、との気持ちがまた一つ大きくなりました。

  

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■キハダの皮むき

さて、大切なキハダの皮むきを心して行いました。キハダは立木で3本ありました。うち2本は両手をまわしても届かないくらいの、大きな、大きなキハダで、1本は調度両手をまわすことのできるほどの大きさでした。沢筋に生えていたため2本はよく育ったものと思います。既に玉切りをして、80cm程度の長さの丸太にしていただいていました。丸太の数は40~50本はあったでしょうか。山の斜面にある丸太を、作業を行う平らなところへ、ゴロンゴロンと落してくるだけで一苦労でした。年輪から樹齢を数えると確かに50年を超えていました。

  

初めに丸太の表面に、チェーンソーで何本か切り込みを入れました。そしてその切り込みから道具を差し込み、樹幹の部分から黄色い樹皮をはがしていきました。黄色い樹皮の部分の厚みは1cm程度ありました。かなり分厚いです。そして黄色の色がとても鮮明です。水分でつるつるとして黄色がとてもきれいでした。

  

キハダの皮むきは6月から7月の木が水を最も吸い上げる時期がむきやすいとされています。通常は手ではがせるほどむきやすいですが、今回は道具をしっかり差し込み、ぐっぐっと力を入れないとはがすことができませんでした。また、この時期であれば、樹幹から黄色い樹皮をはがす時に、その外側の焦げ茶色の樹皮は、勝手にむけてしまうことが多いです。しかし今回は固く張り付いていて中々はがれませんでした。道具を差し込んでできるだけむくことにしましたが、むけたのは全体の半量程度でしょうか。このため今後、乾燥させたのちに、サンダーなどで削り取ることになります。7月の中旬は、皮むきには比較的遅い時期だから?と思いましたが、この翌週、樹齢30年ほどのキハダをむいた時は、やはりペロッとむけました。大きい木の場合、水分は幹の下の方にはあまり滞留せず、成長する上の方の枝や葉の方に回るのかもしれません。

  

社員5人で協力して作業を行い、何とかすべての丸太から皮をむくことができました。皮は全て持ち帰り、樹幹は一旦山に置いてきました。しかし大切なキハダです。樹幹も含めて何かの形で残したく、また別途検討したいと考えています。

  

■最後に

このキハダに巡りあえたことは本当に貴重で幸せなことと思いました。まさに「キハダのつなぐご縁」です。キハダのお陰で、所有者の方に知り合い、大切に育てていただいたお父様のこと、そして祖父の思いを改めて知ることができました。本当に有難いことと思います。今度は私たちがご縁をつないでいく番だと思います。キハダのつなぐご縁を大切に、多くの方々と良い関係を築き、そして未来に向けて確実にバトンをつなげていきたいと思います。

  

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文章・写真:日野製薬株式会社 石黒和佳子


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