薬食同次元
キハダの育苗
10月が始まりました。10月は日野製薬においては新しい期の始まりです。前期に多くのお客様、お取引先様、そして周りの方々にお世話になりましたことを感謝申し上げ、今期も自然の恵みを大切に、良い薬をつくり、お客様へお届けできますように社員一同励んで参ります。
先日、朝日村にお住まいのキハダの育苗家の方のところへお伺いしました。今年5月に弊社ではキハダの植樹を行いましたが、その苗木を育てられた方です。植樹の際に、大変根も幹も太く、根が鮮明な黄色であったことに驚き、どうやって育苗されているのか現場を拝見させていただくため伺ったものです。
今年の春に種をまいたキハダが大変立派に大きく育っていてとても驚きました。山に植樹したキハダよりよっぽど葉がふさふさして大きな苗木もあります。お父様とご子息様で育苗をされており、様々なお話をお伺いすることができました。お二人とのお話の中で印象に残ったことが2つありました。
一つ目は「顔を見る」ということです。どうやって育てられているのか、肥料はいつどの程度やるのか等伺うと、「(苗木の)顔を見て決める」とのお答えでした。育苗は、明治の頃から伝わる伝統の方法があるそうですが、そこに新しい考えを加えて様々な工夫を重ねられているそうです。キハダの他にも、ケヤキやえんじゅなど様々な樹種を育苗されており、それぞれ良い方法は異なるとのことです。「育苗は難しい仕事、顔を見い見いやらなくてはいけないから」とのお話に、自然の恵みを扱うことの難しさ、奥深さ、そしてそれに正面から向き合っていることのすごさを感じました。育苗家は徐々に減ってしまっているそうです。樹種ごとに異なる特性を知りながら、苗木の顔を見て育てる技術は、まさに熟練の技だと思います。この技が是非とも未来へ継承されることを願ってやみません。
二つ目は息子さんのお話です。キハダの苗木の中に、他のものより少し細めのものがありました。私達から見るととても立派に見えましたが、「これは出荷しません」ときっぱり言われました。「自分たちはお客様に直接会って話をすることはほぼありません。届ける苗木が全てです。苗木が自分たちの顔になります。だから自信を持って良いと思うものしか出しません。足元のことだけではない、先々のことを考えてそうしています。」とお話していただきました。大変素晴らしいと思いました。私達も同じです。全てのお客様に直接お会いできるわけではありません。だからこそ自分たちが良いと思うものをつくり、心を込めてお届けしなくてはならない。製品にはつくる人、運ぶ人など携わった人たちの心が宿ると思います。それを忘れてはいけない、と改めて教えていただいたように感じました。
本社のキハダの実が黒くなり始めました。10月半ばには実を採って、その中の種を、来年の春から育苗していただく予定です。そして再来年にはその苗木を弊社で植樹することを計画しています。本社のキハダの種がどのような立派な苗木となるのかとても楽しみにしています。