薬食同次元
ふきのとうの木曽の味
桜の開花のニュースが全国的に聞かれるようになりました。木曽も寒い冬のトンネルを抜け、春の訪れを感じる日々です。暦の上では間もなく「清明」を迎えますが、木曽谷の木々はまだ芽吹き前です。しかし梅が満開を迎え、福寿草が咲き、本社裏山からは時折キジの鳴き声が聞こえるようになりました。今朝は、今年初めてうぐいすのホーホケキョも聞こえてきました。木祖村の桜の開花は例年4月後半から5月上旬です。4月は眠っていた草木が一気に芽吹き、山々が賑やかになる時期です。これからどのように景色が変わっていくか、わくわく楽しみな気持ちがします。
さて、弊社の百草、百草丸の主成分の生薬オウバクは、ミカン科の落葉高木「キハダ」の樹皮です。今年から、国内産生薬を用いた薬づくりの一環として、キハダの植樹や採取のための取り組みに力を入れていく予定です。これに伴い、ここ一か月ほど、キハダ植樹の候補地の調査や、過去に植えたキハダの生育状況の確認のため、野山を巡ることが多くなりました。木曽の森林の専門家の方々にご協力をいただき、木祖村の奥山へ行き、現場で調査を行います。山の中は木々が立ち並び、清流が流れ大変美しいです。
ある日の現場調査の折、木祖村のご担当の方が、車をさっと止めて、林道から森の中に少し入っていきました。何かを採っては手のひらに載せています。何かな?と思ったら「ふきのとう」です。ものの一分もしないうちに沢山見つけて、車にまた戻られました。電光石化のごとくです。私には何も見えませんでしたが、車の中から見つけられたということ。どうやって見つけたのだろう!?すごい!と驚きました。目が違うという事だと思います。木曽には、山菜採り、キノコ採りの名人の方々がいます。山をよく知っていること、あそこならあるだろうという勘所、そしてやはり見つけられる目、を備えていらっしゃるのかなと思います。
別の調査の日に、あそこにもあるよ、と指し示していただいたのが、冒頭のふきのとうの写真です。茶色や灰色の森の景色の中に、鮮やかな萌黄色のふきのとうを発見すると、心まで弾みうれしくなります。命の芽ぶきそのものの力強さを感じます。
ふきのとうをおいしく食べる方法を、木祖村出身で弊社に50年以上勤務している社員に聞いてみました。自家製のお漬物や煮物をよく本社に持って来てくれますが、何でもおいしい料理名人です。ふきのとうは天ぷらが一番おいしいよ、とのことでしたが、それ以外に2つのおいしい食べ方を教えてもらいましたのでご紹介します。
■ふきみそ
ふきみそは、地域によって作り方が様々なようです。ふきのとうを、お湯で湯がいたり、さっとお湯を通して油でいためる方法もあるようです。ふきのとうのほろ苦さと香りを活かすためには、生のまま刻んで油でいためるのがいいよ、と教わりました。
【作り方】
①ふきのとうを小さく刻む
②少量の油でさっといためる
③みそ、砂糖、みりん、酒を入れて練る
みりんと酒は入れなくても良いそうです。分量は「何とも言えない」とのこと。加減をしながら、おいしい味を見つけられると良いと思います。
■ふきのとう入りタラの天ぷら
ふきのとうのほろ苦さが、タラの淡泊な味わいと絶妙にマッチし、ああ春が来た、と実感する美味しさです。また食べたい、来春も作ろう、と思いました。いろどりも春らしくておすすめです。
【作り方】
①ふきのとうを小さく刻み、天ぷら粉に混ぜる
③タラは半切れほどの大きさに切り、水気をよく拭き、塩をふる
④天ぷら粉をつけて揚げる
ふきのとうは、ふきの蕾であり、これから大きな葉が出て、茎も伸びます。ふきの生薬名は、蜂斗菜(ほうとさい)。古くから解熱、去痰などに用いられてきました。すーっと通るふきの茎のように、見通しの良い未来に向けて励んでいきたいと思います。