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生薬の話

韮崎大村美術館をたずねて

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 今年は、2週間も早く桜が咲き、ゴールデンウイーク直前の今は、すでに木々の新緑が濃さを増して初夏の様です。

 4月16日にずっと以前から訪れたいと思っていた"韮崎大村美術館"に夫の運転で行くことができました。

 この美樹館は、ノーベル生理学・医学賞を受賞された大村智先生が、御自身の生まれ故郷の山梨県韮崎市に開館された美術館です。微生物の生産する天然有機化合物の研究をご専門とされ、北里研究所・北里大学で50年以上の研究により、約500種類もの新規化合物を発見し、実用化し、感染症予防・撲滅に貢献されるかたわらで、女子美術大学名誉理事長となり、御自身で集められた絵画等を展示した美術館です。

「花たおやかに咲く」をテーマとした企画展で、堀文子氏、三岸節子氏、片岡球子氏、小倉遊亀氏とその他にも大勢の女流画家の作品が展示され、二階には、鈴木信太郎氏の記念室があり、多くの絵画が展示されていました。
自然の風景や花々等を写し取り丹精込めて描かれた絵画の威力、"人間に勇気を与えてくれるエネルギー"に感動し、豊かな心持で戻ってまいりました。
帰りがけに売店で購入した大村智先生の『自然が答えを持っている』を読み、感慨深く思いましたので、以下に記述いたします。

 

地球からの素晴らしい贈り物"エバーメクチン"

 大村智先生が微生物の代謝に関する研究を始められたのは、1965年であり、毎年多くの微生物を単離し、様々な培養液を使って育て、増やし、それをスクリーニングにかけ、生物活性を明らかにし、人間や動物の薬となるものを見つけたのだそうです。

 1970年代の初め、米ウエスレーヤン大学のマックス・ティシュラー教授の紹介により、メルクとの大規模な産学共同の研究が始まり、多くの素晴らしい科学者と一緒に仕事をしたのだそうです。

 共同受賞者のウイリアム・キャンベル氏とともに発見した"エバーメクチン"のもととなる微生物は、日本の土壌で見つけたものでした。エバーメクチンはまったく新しいタイプの寄生虫の防除剤で、体の内外の病原体を殺す能力があり、メルクはエバーメクチンをもとにより安全で効果的な化合物"イベルメクチン"を作ったのです。

1981年にイベルメクチンを含む物質が動物薬となり、やがて人間の治療薬としても効果があることがわかり、イベルメクチンは熱帯地域の人々を苦しめてきたオンコセルカ症(河川盲目症)の治療薬として優れていることが判明しました。この病気は皮膚の病気や失明を起こし、時に死に至るもので、イベルメクチンが承認されると、メルクはすぐにアフリカ・南米などに無償供与を始め、この薬を必要とする貧しい人々にも行き渡るようにしました。

2000年には蚊が媒介する血球系フィラリア症に対しても、イベルメクチンの無償供与が始まりました。この病気の感染リスクにさらされている人は世界人口の約20%に当たる13億人もおり、すでに1億2000万人の人が感染していましたが、無償供与によって劇的に減少しました。イベルメクチンの投与を受けた人はこれまでに2億2700万人に達するとのことです。

 あらゆる問題やニーズに対する答えは自然の中にあり、微生物は無限の天然資源であると先生は説いています。「一期一会」を大切にし、相手を尊重することを信条としています。

 一人一人の力が集まって何かを成し遂げることが出来ることや人との出会いを大切にすることが語られていて、私は改めて自らを戒めております。


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