薬食同次元
秋の豊穣の時を迎えて
木曽では秋の紅葉が見頃を迎えています。山々が黄や赤に染まり、温かみのある風景が木曽谷に広がっています。農家直売所などの店頭には、きのこ、さつまいも、白菜、りんご、ぶどう等々、沢山の野菜や果物が並び、まさに豊穣の時を迎えています。
先週、弊社の古くからのお取引先様に訪問させていただきました。秋晴れのこの日、調度、甘茶づくりをされていました。ほおかむりをされた地域の方々が集まり、葉と茎を分けて、大きく拡げて天日干しにし、揉む作業を行っています。その奥では、乾燥唐辛子づくりもされていました。秋の豊かな風景だなぁと思いました。
帰りがけに、見送りのためにわざわざ外に出てくださった社長さんが、事務所に走って戻られたため、どうしたのかな?と思っていましたら、「親父がつくったから持っていって」とさつまいもの沢山入った袋をくださいました。90代のお父様、会長さんが畑で育てられたさつまいもは、ごろんごろんと大きく、土の香りがして、とてもありがたくうれしく頂戴しました。時間をかけ、精魂込めて育てた作物をくださるというのは、大変うれしい贈り物です。心を豊かにし、いただく時にその土地の滋養のようなものを感じ、活力が沸いて出ます。食べものの力は改めてすごいと思いました。
先日、辰巳芳子氏著の「食といのち」を拝読しました。辰巳氏の著書は、母が愛読し、以前より一度読んだ方が良いと勧められていたものです。
「いのち」とは「魂そのものをも含み、ヒトを人にすることを可能にするもの」であり、そこに「食」が大きく関わっているという内容に、深い感動と背筋がピンと伸びるような気持ちがしました。食べものは、栄養成分やカロリーだけでとらえられるものではない。人が人らしく生きていく上で食べることは何より大切で、食べものから得られる有形・無形の力は絶大なものということと理解しました。
著書の中の辰巳氏と看護師の川嶋みどり氏との対談に、下記のような一節があり、大変感動させられました。
「とにかくスープ一口でもいいんです。口からお腹に何かが入ることは免疫力と密接に関係しているのです。注射したりお薬をあげたり手術したりするんじゃなくて、本来その人が持っている力を発揮させるのが看護です。ですから、自然治癒力を高めるという意味では、もうお食事をご自分の口から召し上がるのが一番最高なんです。」
弊社の百草、百草丸は、自然の生薬を用いた胃腸薬です。ご高齢のお客様から、お年を重ねられるにつれ、食が細くなってしまった、食欲がない、少量食べるとお腹が張る、すぐに胃がもたれる、便通が悪い、という多くのお声をお寄せいただきます。百草、百草丸は、自然の生薬が胃腸の機能を高め、健やかに整え、弱った胃腸の症状を改善します。自然の恵みの生薬だからこそ、有形のものだけでない、人の身体に寄り添い、働きかける無形の作用があるように思います。まさにご自身の口から食べものを召し上がることを、なるべく長く、できることならばいのちの続く限りお支えするのが百草、百草丸であり、これをつくる弊社には大きな責任があるということを痛感しました。
弊社の経営理念に「健康長寿に寄与する良質な製品とサービスを提供する」というものがあります。これはいわゆる薬をご提供するのみではない、その方らしい豊かな暮らしをご支援することを示しており、食べることをそのものをお支えすることを意味していると感じました。その意味をよく認識し、日々の業務に邁進しなくてはらないと感じています。
秋のこの時期は、日本の四季の素晴らしさ、その土地の風土や気候にあった食べものの有難みを感じる季節です。豊穣の秋から新たな気づきをいただき過ごして参ります。
※「食といのち」 辰巳芳子氏 (文藝春秋・2012年3月25日 第1刷発行)