薬食同次元
木祖村商工会女性部 きはだ餅づくり継承講習会

本社のキハダの木々もすっかり落葉し、黒い実がよく見えるようになりました。キハダの実は二年に一回程度、雌の木に生ります。今年、弊社のキハダは「生り年」にあたります。しかし、例年に比べると実の量が少ないようです。夏の酷暑が影響したのかもしれません。落ちてきた実は大切に拾い保管しています。来年以降、種を取り出し育苗を行う予定です。今月の後半には、木の上の実も収穫を予定しています。
先日、木祖村商工会女性部様主催の「きはだ餅づくり継承講習会」に参加させていただきました。木祖村では古くから「きはだ餅(キハダ餅)」を食べる風習があります。しかし、今では作られる方も減少しています。木祖村に伝わる大切な食文化を未来へ継承するため、商工会女性部様が、本講習会を企画、開催してくださいました。参加の機会をいただきましたこと、心から感謝しております。講師は、村内できはだ餅を作り続けていらっしゃる五月日節子さんでした。冒頭のご挨拶で「私は先生じゃないよ」のお言葉から始まった講習会は、和気あいあいとし、とても楽しいものでした。
●きはだ餅とは
キハダは、ミカン科の落葉高木で、その樹皮は百草、百草丸の主成分です。「きはだ餅」はその実を使ったお餅です。キハダはミカン科であることから、実には柑橘系の香り、苦味と甘味があります。また山椒のようにぴりぴりと舌に残る刺激もあります。実を煮出してエキスを抽出し、米粉やもち米に加えてつくるきはだ餅は、何ともいえない独特の美味しさと香りがあります。
以前、本ブログできはだ餅のことを記載させていただきました。それは、実を煮出して抽出した煮汁に、米粉、そば粉と砂糖を加えて、かいたもの(かき混ぜたもの)でした。しかし、一言にきはだ餅と言っても、様々な形態があるようです。今回、教えていただいたのは、もち米を実の煮汁で炊くきはだ餅、そしてきはだのからすみでした。からすみとは、岐阜県南東部や長野県南部に伝わる米粉に砂糖を入れて蒸したお菓子です。
いずれも実から煮出した煮汁を使う点は共通しています。
<きはだ餅の色々>
◎米粉とそば粉のきはだ餅
実の煮汁に米粉、そば粉と砂糖を加えてかき混ぜたもの
「ういろう」や「すあま」をもっと柔らかくしぽってりとした食感
※2022.01.01付「初めてのキハダ餅」でご紹介
◎もち米のきはだ餅
実の煮汁でもち米を炊き、砂糖を加えて混ぜたもの
米はつぶさず原型を保ち、中華ちまきの米のような食感
※今回の講習会で教えていただいたもの
◎きはだのからすみ
実の煮汁を米粉と砂糖に加えて蒸したもの
「ういろう」よりも硬くもっちりとした食感
※今回の講習会で教えていただいたもの
●きはだ餅の作り方
◎きはだの煮汁
きはだの実を、ざるでふるいゴミを落とし、水で洗う
きはだの実を鍋に入れ、たっぷりの水を加えて沸騰させる。(500mlペットボトルに一本分の実に対して水は4ℓ)
沸騰後、10分間煮て、火を止めて冷まし一晩置く
翌日、煮汁をざるでこす
※きはだの実は「一番だし」のみならず「二番だし」まで出して良い。
◎もち米のきはだ餅
もち米1升を洗い、炊飯器に入れる。
炊飯器に「きはだの煮汁:水=7:3」の割合で水分を加えて炊く。
炊きあがった米を飯台に出す。
熱い間に、砂糖180gと塩一つまみを加えて、しゃもじでよく混ぜる
◎きはだのからすみ
米粉200g、砂糖30g、塩一つまみを混ぜる
きはだの煮汁200ccを鍋に入れ、火にかけ、周りがふつふつする程度まで沸騰させる。
熱い煮汁を少しずつ、混ぜた粉末に加えながら、木べらで混ぜる
米耳たぶ程度の硬さになるよう煮汁の量を調節する
5~8cm程度のかたまりを取り、蒸し器に並べる。
※もう一度蒸すため、大きさや形は気にする必要なし
蒸し器で20分間、中火で蒸す
こねバチに取り出して手で練る
からすみの型にサランラップをかけて、からすみの元を中に入れて延ばす
ラップにくるんだまま蒸し器に入れ15分蒸す
●講習会に参加して
もち米のきはだ餅については、今回の講習会で初めてその存在を知りました。同じ木祖村の村内できはだ餅と言っても、様々な形があるのだと大変驚き、興味深く思いました。実際に食べさせていただくと、もち米がつやつやと輝いて甘く、キハダの実らしい香りがふんわりと漂いとても美味しかったです。作った直後の温かい時も、冷めた後も米が柔らかく、美味しくいただきました。
きはだのからすみは、いつもキハダ植樹や保育でお世話になっている木曽森林組合の方が、「かあちゃんが作ったから、ちょっとおすそわけ」と本社へ持ってきてくださったり、キハダ皮むき後の昼食に伺ったお蕎麦屋さんで「キハダで集まった人たちだから、珍しいかなと思って用意しておいたよ」と出してくださったり、と、有難いことにこれまでに何度か実際に食べさせていただいたことがありました。しかし作り方を教えていただいたのは今回が初めてでした。蒸すことによって米粉が凝縮して、もっちりとし、こちらもとても美味しかったです。
これまでにいただいたとのあるきはだ餅は、それぞれ味が少しずつ異なり、その家、その家の味や香りがあります。しかしどれもとても美味しく、家庭ごとの違いがあるからこそ、郷土の懐かしい味わいとなるように思いました。
今回の講習会は、キハダを用いた木祖村特有の文化の大切さを未来へ継承しようと商工会女性部の湯川部長をはじめとする皆様が企画、開催してくださったものです。昨年は、キハダ染め講習会を開催いただき、更に、源流夏祭りでキハダの飲み物のご提供を行っていただきました。そして今年はきはだ餅づくりの講習会を開催してくださいました。キハダに興味・ご関心を持つ方が増えることは、私どもにとって大変有難いことです。村内でこのような取り組みが行われることに大変うれしく思いました。そして個人的にもとてもワクワクと楽しみに参加させていただきました。開催のために、様々な準備をしてくださった商工会女性部の皆様に心から感謝しております。とても楽しい時間を過ごさせていただきました。
講習会で作り、いただいて帰ったきはだ餅は、社員の皆で分けていただきました。社員も興味津々で美味しくいただきました。きはだ餅づくりを将来に継承できるよう、私たちも、今回の講習会でバトンをいただいて、できることを行っていきたいと思います。貴重な機会に参加させていただき、心より感謝しております。
寒さが厳しくなってまいりました。どうかお身体にくれぐれも気をつけて良い年末年始をお迎えになりますようお祈りしております。


