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薬草の花

トロロアオイ(黄蜀葵)【12月】

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※トロロアオイは8月~9月です。
食用や和紙づくりの材料にも

(写真①:同属のオクラの花。花も果実もよく似ているが、ふた回りほど小さい)

夏の終わりに和紙づくりが盛んな地区を訪ねたとき、野菜畑や農家の庭先でトロロアオイが高さ一から一・五メートルほどに成長し、その花茎の先端にクリームイエローの大きな花を咲かせているのを見かけた。この花の花弁は五枚で、扇風機の羽根のように重なり合うのが特徴である。黄色い花弁の基部は暗紫色で遠目にもよく目立つ。この花は大きさは異なるが、同じアオイ科トロロアオイ属のオクラとよく似ている。オクラの若い果実は食用にされるが、トロロアオイの未熟果実も同様に食べられ、その美しい花もさっと湯がいて酢の物にして食べると美味である。

薬用となる主根は、和紙づくりの重要な材料になる。根をよくたたいてどろどろになった粘液成分を、紙すきのネリとして使用する。ネリにはトロロアオイのほかに特殊な場合としてノリウツギが用いられる。ネリは紙を漉き上げ乾燥させたときの接着材としての働きもあるが、原材料を水に溶かし込んだときに繊維を均等に分布させる働きもあり、そのためにもトロロアオイの根は重要である。

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(写真②:秋、根を掘り採る。和紙づくりのネリともなる)

主根のコルク皮を除いたものが生薬「トロロアオイ(黄蜀葵根こうしょくきこん)」で、緩和剤または粘滑剤として、胃腸カタル、気管支炎、粘膜などの炎症に適応される。成分はアラバン、ガラクタン、ラムノサンなどからなる粘液質で十六パーセント内外入っている。これらの粘液質は多糖体に分類され、食物繊維としても最近注目されている。

成分はほかに、クエルセチンなどのフラボノイドが含まれる。

Abelmoschus manihot アオイ科トロロアオイ属

別名●トロ、ネリ 生薬名●黃蜀葵根(こうしょくきこん)

【ミニ図鑑】 高さ一・五メートルほどにもなり、大輪の花を咲かせる。花は、ゆがいて酢の物に。

▶花期  8~9月

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(写真③:10センチ以上もある大きな花。湯がいて食べられる)


出典:「信州・薬草の花」(クリエイティブセンター)
市川董一郎(文)栗田貞多男(写真)


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