薬食同次元
信州大学の生徒の皆さんとの取り組み
木曽谷では山々の緑の色も落ち着き、本社のキハダの葉も少しずつ黄色に色づいてまいりました。いかがお過ごしでしょうか。この夏から信州大学の生徒の皆さんと、講義、及びインターンシップを通して、ともに過ごす機会がありました。皆さんの真っ直ぐで真剣な様子に心を打たれ、大きな力をいただきましたので、ご紹介します。
信州大学アントレプレナー演習
「アントレプレナー演習」は、経法学部にて今年から開始された講義です。 応用経済学科より約20名の3年生が第一期生として受講しました。弊社は、協力企業として、外部講師を務めさせていただきました。企業の経営課題に対し、原因を分析し、あるべき姿とそこに向かうための対策を策定する実践教育科目です。弊社の他に、藤原印刷株式会社様、キノハナkinano様が、協力企業としてご一緒に外部講師を務められました。
7月中旬の第一回目の講座で、生徒の皆さんと初めて顔を合わせ、会社紹介と課題の提示を行いました。弊社の課題は、若い世代の方々にもっと伝統薬に親しんでいただきたい、というものです。演習向けにターゲット層を絞り込み「30~40代のお客様を増やすために何をしたら良いか?」をテーマとし検討いただくこととしました。弊社の課題には8名の生徒の皆さんが、4名ずつの2チームに分かれ、取り組んでいただくこととなりました。
9月に入り、オンライン会議で一人ひとりから検討状況の報告と意見交換を行っていただきました。それぞれのユニークな着眼点や、キラリと光るアイディア、お互いへのコメントや質問が新鮮で、私どもにとっての学びも多く楽しい時間を過ごしました。
その後中間報告を経て、9月の下旬には、最終報告会がありました。
一つ目のチームからは、広告宣伝の強化とアプリ開発についてご提案いただきました。広告宣伝というど真ん中の販促手段に果敢に取り組み、素晴らしいキャッチフレーズも検討していただきました。また、広告宣伝後のお客様の導線はアプリにすべきという斬新な発想にも驚かされました。医薬品等の広告宣伝には法令順守が求められます。それも考慮しながら、ご自身たちの身近な経験から、解決策の検討を行い、提案いただいたことが感じられ、大変うれしく思いました。
二つ目のチームからは、新商品の開発、そのPR方法、及び既存商品のパッケージのイラスト再考についてご提案をいただきました。新商品については、市場分析、具体的な顧客像として「ペルソナ」を設定して検討を行っていただきました。「30-40代は子育てや仕事の責任が増えるため、主たるニーズは治療より予防」との洞察には舌を巻きました。そしてAIを使ったパッケージデザインなども行っていただき大変驚きました。また弊社では、天然の生薬の苦味を活かした薬づくりを大切なことと考えています。このことを良くご理解いただき、ご提案内容に盛り込んでいただいたことも大変うれしく思いました。
いずれのチームも中間報告から各段にレベルアップし、練り上げた素晴らしい内容を発表いただきました。LINEグループや電話を使って議論を深めていただいたそうです。各自が自分事として真剣に考え、取り組んでいただいた成果と思います。発表をお聞きしながら、大きな感動を覚えました。そして、生徒の皆さんのアイディアを何らかの形で弊社の社業に活かしていきたいと思いました。
弊社以外の企業の経営課題に取り組んだチームの発表も素晴らしいものでした。各経営者の皆様のコメントからも大きな学びをいただきました。
信州大学インターンシップ
9月には、信州大学よりインターンシップ生3名の受け入れも行いました。2名が農学部、1名が経法学部の生徒の方でした。前半3日間は本社において品質管理および研究開発業務、後半3日間は日野百草本舗 奈良井店で販売業務の体験と見学を行いました。前半は3名、後半は2名が参加しました。
毎日様々な業務を体験、見学しながら、大変真剣に各業務に携わり、真っ直ぐな目線で、多くのことを学ぼうと取り組んでいただいたことが印象的でした。日報に素晴らしいコメントを書いていただいたため、ご本人たちのご了解をいただいて共有させていただきます。
●品質管理業務
・薬を服用する際、苦くないもの方が好ましいと感じてきたが、苦味の成分には胃の働きを活発化させる働きがあると知った。日野百草丸の場合は、二次コーティングで苦味を出していると知り、薬に使用されるものにはそれぞれ役割があることを実感した。
・改めて百草や百草丸の成分や製造方法をご説明頂き、単一化合物で構成された薬とは明らかに異なるものであることを再認識し、同時にそのような複合的な効能をもたらす作用機序に興味が深まった。
●研究開発業務
・研究開発は自らで考えた手法を自らで評価しなければならないため、品質管理の方法を熟知している必要がある事を知った。改めて、品質管理という基盤がいかに大事かという事を認識できた。
・新しい評価方法を検討する際には、再現性の確保が重要であると理解した。
●店舗販売業務
・お店に来てくださる方の中には、すでに百草丸をご使用いただいている方もいれば、百草丸についてあまりご存じでない方もいらっしゃった。百草丸の説明に加えて、他社製品との違いをお伝えするなど、お客様が何を知らず、何を求めているのかを考えて接客することが必要だと感じた。
・奈良井店見学では、百草丸や普導丸などに含まれている生薬からできた商品を見させていただき、お香、お皿などキハダのすべてを余すところなく使いたいという気持ちを強く感じ、また、壁に使われている残渣やエキスなど、SDGsにも配慮した取り組みがさまざまある事に感動した。
奈良井店でインターンシップを行った生徒2名には、最終日に報告とディスカッションを行っていただきました。大変楽しいひと時となりました。
最後に
アントレプレナー演習、インターンシップを通して20名を超える信州大学の生徒の皆さんとお会いする機会をいただきました。企業の目的や大切にしていることは何か、それに対して自分達はどのように考え何ができるのか、をしっかり考えながら取り組む様子に感動し、固定概念にとらわれない柔軟な発想とアイディアに、弊社も多くの学びをいただきました。
生徒さん達のご提案を、真剣に弊社の業務に取り入れていきたいと考えています。また、希望される生徒さんには、弊社のイベントや取り組みに今後も参加いただき、継続的にやり取りができると良いと思います。
各生徒の皆さんは、素晴らしい個性にあふれていると感じました。自分が良いと思うこと、楽しいと思うこと、好きなことを大切にして、自分らしく明るい未来を切り開いていってほしいと心からお祈りしています。
アントレプレナー演習においては信州大学 経法学部の藤野義和先生、インターンシップにおいては農学部の梅澤公二先生にお世話になりました。ここに感謝申し上げます。
日野製薬株式会社
代表取締役社長 石黒和佳子