薬食同次元
春の野山とキハダ

木曽谷では、高い山々に残雪を抱きながらも、日の光がより一層、明るさと温かさを増し、春が少しずつ訪れていることを感じます。この季節、野山を歩き、小さな春の兆しを見つけることは楽しみの一つです。本社の裏には福寿草の黄色の花が一面に咲いています。ふきのとうも芽を出していることと思います。
さて、キハダに関する取り組みを進めている中で、最近、キハダがあるからやるよ、とお声をかけてくださる方々が増えてきました。大変有難いことです。キハダの樹皮である生薬オウバクは百草、百草丸の主成分です。国内産オウバクは年々希少となっていますが、弊社では国内産オウバクを用いた薬づくりを継続するため、キハダの植樹、保育や皮むきなど様々な取り組みを実施しています。このことを知り、ご協力してくださる方々が多くいらっしゃることに心より感謝しております。
先日も同じ村内の方が、「キハダがうちにある、やってもいいよ」とおっしゃってくださいました。早速弊社の担当者が、現場をご一緒に見させていただくと、川沿いの土地に立派なキハダが何本も生えていました。
その方のお父様の時代に、当時弊社がお配りしていたキハダ苗木を植樹したものだそうです。創業者の日野文平の時代には、近隣や遠方のご希望者の方々に苗木をお配りしていました。その苗木が大きく育ち、このようにお声をかけてくださること、本当に有難く思います。過去から今の私たちへの贈り物のようです。
別の日に現場を訪問し、見せていただくと、大変立派なキハダが密集して生えていることを改めて確認しました。土地の境界を明らかにするために、まとめて植樹されたのだそうですが、キハダが約10本、ケヤキが1本、針葉樹が2本生えており、樹木同士の間隔は1メートルもありませんでした。キハダの胸高直径は様々ですが、大きいもので、50~60cmはありました。また隣接する木々があるためと思われますが、キハダの幹は真っ直ぐ伸びていました。
キハダは天然林の中では群生しないことで知られています。しかし植樹の場合は、密集して群生し、それぞれがかなり大きく成長することを示す例でもあると思います。川沿いで陽当たりが良く、キハダ成長の適地であることも関係していると思いますが、今後弊社において植樹方法を検討していく上で、参考になる事例でもあります。
今後しかるべき時に、皮むきをさせていただきたいと思います。先人が育ててくださったキハダを大切に薬づくりに生かしていきたいと思います。また、現代の私たちも未来の世代に何かを残さなくてはならない、自分たちで植樹するのみではなく、苗木の配布を本格的に開始しようと思うきっかけとなりました。キハダのつなぐご縁は素晴らしく有難いものばかりです。
春が訪れていますが寒暖差の大きい毎日です。どうぞ体調管理に気をつけてお元気にお過ごしになられますようお願いいたします。
日野製薬株式会社
代表取締役社長 石黒和佳子