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薬食同次元

木曽の伝統発酵食品「しょうゆ豆」

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 間もなく節分を迎え、暦の上では春の始まりですが、木曽谷では厳しい寒さの日々が続いております。しかし朝日の昇る時刻が早まり、明るい日の光を見るとホッとします。徐々に春に向かっていることを確認します。

  

 さて先日、日野製薬本社のある木祖村のご年配者の方から「しょうゆ豆」をいただきました。しょうゆ豆は木曽の伝統発酵食品です。豆糀にぬるま湯、塩、生姜を加えて作ります。しょうゆ豆という名前ですが、しょうゆは入っていません。チーズのような味わいがします。

 

チーズのような味わい:しょうゆ豆との出会い

 年末のある日、お宅を訪ねると「今、しょうゆ豆を作っているよ。まだ出来てないけど、出来たら取っておくから、年が明けたら取りにおいで」と言ってくださいました。1月に再びお訪ねすると、大きな瓶をいただきました。そして「口に合うか分からないけどね。珍しいと思って」と言いながら、その場で食べさせてくださいました。チーズのような濃厚な味と柔らかな食感に生姜がさわやかで、とても美味しく感激しました。

  

 作り方をお聞きすると、大豆を蒸して麹をまぶし豆糀(まめこうじ)の状態にしたものを、ぬるま湯に浸して一晩おき、塩を5日に分けて加え、発酵させ、最後に生姜の千切りを加えると出来上がるそうです。

  

 「昔、若い頃は、華をかける(豆を蒸して麹をまぶし豆糀にすること)のも自分でやったけどね。今はやってくれるから、それを届けてもらっているよ。12月になると電話でお願いしてね。そうすると年末の前には持ってきてくれるよ。今は昔ほどしょうゆ豆を作る人もいないって。それなのに華をかけるのをやってくれるから助かる。」とお話いただきました。また「しょうゆ豆は発酵食品だから身体にいいと思うよ。私はお茶漬けにしてよく食べる。お酒飲む人も好きだって。この辺じゃ昔から作っているよ。私も若い頃に、近所の人に作り方を教わった。」とも教えていただきました。

豆糀づくり

 豆糀は、隣町である木曽町の小池糀店さんがつくられています。小池糀店さんの豆糀づくりについては、信州の地域新聞「市民タイムズ」に掲載されていました。大変な作業であると想像します。

  

【伝統の豆糀 仕込み始まる 木曽町の小池糀店 しょうゆ豆の原料(2024年12月21日付)】 

「木曽地域の伝統発酵食品「しょうゆ豆」の原料となる「豆糀」の今冬最初の仕込みが、木曽町福島の小池糀店で始まっている。昔ながらの製法で完成まで3日かける。徹夜で何度も状態を確認し、温度を調整する。

 いった大豆を蒸して麹をまぶし、「諸ぶた」と呼ぶ木箱の中で菌を増殖させる。十分に菌が増殖した豆は、純白の衣を着たようになる。完成した豆糀を購入し、各家庭でぬるま湯に浸して一晩置き、塩を加えて数日かけて発酵させるとしょうゆ豆になる。ご飯に混ぜたり餅に付けたりして食べる。酒にも合う。」

  

 なお、しょうゆ豆をくださった方に聞くと、昔はワラの上に豆を広げて華かけを行っていたそうです。

    

しょうゆ豆づくりを実際に教えていただきました

 小池糀店さんにご連絡すると、豆糀づくりをまだ予定しているため、予約を受け付けていただけるとのことでした。このことを、しょうゆ豆をくださった方にお話しし、お願いしたところ、快く、実際にしょうゆ豆の作り方を教えていただけることになりました。

 

 予約日に取りに行った豆糀は紙袋に入っていました。手に持つと少し湿ってホカホカしていて、生きているものを受け取った感覚がしました。保管する場合は、寒い場所に、ビニール袋などに入れず、紙袋のまま保管してくださいということでした。発酵が進み過ぎず、一方で糀が生きやすい状態を保たなくてはならないと認識しました。

 

 その数日後、しょうゆ豆づくりを教えていただくため、豆糀と、漬物容器、あら塩を持って、お宅に伺いました。楽しく色々なお話をしながら、教えていただきました。

  

<しょうゆ豆のつくり方>  

① 豆糀を容器に入れるcrude_drug_250201_soybeans2.jpg

まずは豆糀を容器に入れました。この後、ぬるま湯を加えるため、なるべく大きめの容器が良いそうです。私は漬物容器を持参しましたが、タッパーウェアでも何でも良いよと教えていただきました。豆のかさが、容器の半分になる程度が良いようです。

紙袋を開けると、白い菌がきれいにかかった豆糀が出てきました。見た目は甘納豆のようです。糀をまぶすことを「華をかける」と言いますが、白い菌が華のように見えるからということでした。一粒食べてみると、まだ薄味ですが、滋味深く、出汁のような味がしました。

   

② ぬるま湯を加える

次に①の容器に、ぬるま湯を加えました。私がお宅へお邪魔した時には、既にだるまストーブでお湯を沸かしてくださっていました。熱い湯に水を加え、ぬるま湯にしました。触った感覚では20~30度程度と感じました。容器の中の豆糀がひたひたになるくらいぬるま湯を加え、箸でぐるりと3回くらい混ぜました。水の量はあまり多いと良くないようですが、発酵中に豆が水にしっかり浸かっていた方が良く、出来上がった後しょうゆ豆と一緒に食べる汁もおいしいため、ぬるま湯の量は加減が必要です。

  

③ 一晩置く

さて、これでもう一日目の工程は終わりです。あとはふたを閉めて寒い場所に一晩おいておきました。

  

④ 塩を加える

塩は翌日の朝から5日に分けて入れました。②が終わった後に、「塩は盃一杯くらいでいいよ」と言って、盃にあら塩を入れて測っていただきました。そして「あらかじめ測って5等分にしておけば、朝入れるのが楽だからね」と盃一杯のあら塩を5等分にして、ラップにつつんで渡してくださいました。盃一杯とは25g程度です。豆糀1枚(1kg)に対して25gのため多くありません。「塩が多いと菌の発酵を止めてしまうから、少しずつ入れるのがいいよ」ということでした。

初めて塩を加える朝、ふたを開けると発酵の良い香りがしました。塩がまんべんなくいきわたるように、容器の底から、箸で何度かかき混ぜました。5日間、これを繰り返しました。

  

⑤ 生姜を加える

5日目の朝、塩を加えるのと同時に、生姜の千切りを加えました。しょうゆ豆は、生姜がとても良いアクセントになります。豆糀1枚(1kg)に対して、大きなひとかけら分入れました。生姜は沢山入れた方が美味しいということでした。

  

 出来上がったしょうゆ豆は、瓶につめて保管しました。

しょうゆ豆づくりを通して

 教えていただきながらつくったしょうゆ豆は、やはり元々いただいたしょうゆ豆と味が異なり、また汁も少し濃く濁りました。元の豆糀、塩加減、保管場所の温湿度や、家に住む菌の違い、混ぜ方や向き合い方の違いなど、様々な違いが影響すると思います。発酵の奥深さを改めて感じました。しかし毎日少しずつ様子が変わり、徐々に発酵の進む豆とお付き合いするのはとても楽しい時間でした。冬の間、しょうゆ豆を食べられるのが楽しみです。

  

 季節のめぐりの中でつくられる木曽地域ならではの発酵食品が、人々の健康を支えていることを改めて感じました。また若い頃に教わったしょうゆ豆を、毎年つくり続ける暮らしの営みの尊さも感じました。次の世代を担う私たちも、それを出来る限り継承していかなくてはなりません。豊かに健やかに暮らすことについて改めて考える機会をいただきとても感謝しています。

  

 春まであとわずかです。どうぞお身体にご自愛されてお元気でお過ごしくださいますようお祈りします。

  

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