薬草の花
エゴノキ【2月】
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※エゴノキの花期は5月~6月です。
果実は洗濯石鹸代わりや魚採りに...
(写真①:細い側枝の先に白い花を下垂させる)
新潟県の米山の帰り、林道の林縁にエゴノキが枝いっぱいに純白の花を咲かせていた。
この木は、湿潤な低山を好み全県に分布するが北部には少ない。 また、花木として庭に植えられているのを見かける。秋には未熟なサクランボのような液果が枝いっぱいに垂れ下がり、 やがて液果は縦に四つに裂けて内部の黒い核が現れる。
名前はエゴノキの果皮が「えぐい」 ことから命名されたのだろう。「えぐみ」は、渋くて苦い味のことである。 まずいうえ有毒なので、 エゴノキの果実は食用にならない。
一方、含まれるサポニンの作用を利用して石鹸の代用に、さらにその魚毒作用を利用して魚採りに使われた。 エゴノキの未熟な果皮を潰して水に流し、浮き上がった魚を捕まえる漁法であるが、今は法律で禁止されている。
エゴノキの果皮にはエゴサポニンと呼ばれる多量のサポニンが含まれている。 エゴサポニンは数種のエステル型サポニンの混合物で、強い抗炎症作用が認められているが、 薬用として実用化されていない。
(写真②:エゴノキの実。秋には果皮が割れるがまずく有毒)
サポニン類はエゴノキやムクロジの果皮、 ヨーロッパ原産のナデシコ科のサボンソウの根茎、サイカチの豆果など多くの植物に見出され、動物ではヒトデやナマコに含まれている。サポニンの語源はサボンソウからきたものである。サポニンの共通する性質として鎮咳去痰作用、毒性として赤血球破壊(溶血)作用、 水によく解けて泡立つ起泡性や界面活性作用があり、昔から洗剤の代わりに用いられてきた。
石鹸のことをサ (シャ) ボンともいうのはここからきている。
Styrax japonica エゴノキ科エゴノキ属 別名●チシャノキ
【ミニ図鑑】 用途は広く床柱や枝、殺虫剤や肥料としても利用される。
▶花期 5月~6月
(写真③:雑木林などに生える高さ10メートルほどの中木)
出典:「信州・薬草の花」(クリエイティブセンター)
市川董一郎(文)栗田貞多男(写真)