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薬食同次元

キハダの森づくりに寄せて

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 2024年5月18日、約70名の方々のご参加によりキハダの植樹が行われました。

 「今年の植樹は鳥居峠」と、石黒和佳子代表取締役社長の並々ならぬ意気込みに、お天気に恵まれますように、無事に植樹ができますようにと念じておりましたが、素晴らしい植樹並びにその後の座談会であったとの話を聞き、大変嬉しく感慨深く、ご協力・ご参加下さいました多くの皆様に深く感謝いたしております。

 

 さて、今年からの新たな取り組み『混交林の植樹』については、大きく心が揺さぶられ、「宮脇方式の森林」という言葉が私の頭をよぎり、改めて宮脇昭(みやわきあきら)先生の著書『植物と人間-生物社会のバランス-』と『見えないものを見る力-潜在自然植生-』を読み、YouTube『いのちを守る300キロの森づくり-震災復興ガレキの山は貴重な地球資源-』を視聴しました。

 

 宮脇昭先生は国内外の森の再生に尽力した植物生態学者です。元横浜国立大学名誉教授、元国際生体学会会長で、2021年に93才でお亡くなりになられましたが、御存命中にはその偉大なる地球環境問題への貢献により、日本の研究者として初めてブループラネット賞(地球環境国際賞)など数々の賞を受賞されました。

 

 「宮脇方式の森林」とは、その土地本来の植生を活かし、間隔を詰めて何種類もの植物を植えることで、荒廃した土地であっても短期間に森林を再生させることができる、というものです。宮脇先生はこの方法で1970年代から植樹活動を行い、国内外の各地で1700以上の森をつくってこられました。

 「宮脇先生の提唱する潜在自然植生」とは、その土地本来の樹木である「ふるさとの木」を見極めて苗木を育て、主役となる樹種を中心に混植・密植して本来あるべき自然の森(本物の森)を創生するものです。先生は日本各地の植生についてのカタログ(目録)をつくり「こういう場所にはこういう種類の植物が生える」という情報を整理し、そのご経験からある程度その環境に合う植物を絞り込んだ上で、いろいろな種類を密植させることが大事だと考えていたのです。すると環境に合った種が生き延び、それらが複雑に絡み合い、自然の森に近い姿になっていきます。

 「自然植生」とは、人間の影響を受けず、自然のままに生育する植生のことです。

著書『見えないものを見る力-潜在自然植生-』の中の「日本人と鎮守の森」について

植物は地球の生態系の中で唯一生き延びるための生産者であり、人間をはじめとするすべての動物の生存の基盤となっています。土地本来の「ふるさとの木によるふるさとの森」は、高木層、亜高木層、低木層、草木層からなる多層群落の森で、表面積は単層群落の芝生などの30倍もあります。深根性・直根性の常緑広葉樹からなる森は多彩な環境保全、災害防止の機能を有し、生物多様性を維持し、炭素を吸収・固定して地球温暖化抑制の働きもしています。世界的には何百年にもわたる家畜の放牧や都市化や農地化によってこのような森は激減しており、日本も同様ではあるのですが、「ふるさとの木によるふるさとの森」いわゆる「鎮守の森」が残されており、宮脇先生はあらゆる自然災害に耐える二十一世紀の「鎮守の森」「いのちを守る森」をつくることが重要と説いています。

YouTube『いのちを守る300キロの森づくり-震災復興ガレキの山は貴重な地球資源-』

今までの防潮林は、アカマツ、クロマツなどの一種類の木による林が中心でした。東日本大震災による大津波の時、根こそぎ倒され、防潮林として機能せず、しかもそれが流され大変危険でした。そして多くの命を失いました。その樹木の選択に誤りがありました。

震災で出た大量のガレキの山、その中の毒と分解不能なものを除き、有効資源として被災地の海岸沿いに穴を掘り、そこにガレキと土を混ぜて高いマウンド(丘)をつくり、その上に土地本来の樹種の幼苗を植えるのです。ガレキと土を混ぜると通気性のよいマウンドができ、根も呼吸していますから、樹木は健全に育ちます。これで植樹地ができました。木を植えるにあたっては木の選択が重要です。土地本来の潜在自然植生による主木群を選択することが基本です。これらの主木群は、深く真っすぐに土に入ります。一平米に2~3本が適切です。植えてから2~3年は草取りが必要ですが、その後は管理不要です。およそ20年で豊かな森となります。この森が最も自然で力強い状態であり、世代交代を続けながら保たれるのです。高い木から低い木、多くのいろいろの種類の木々が緑の壁を作ります。マウンドを高くすることで、津波を防ぎ、私たちが助かる可能性を高めてくれるのです。被災した人たちの希望の森、いのちを守る二十一世紀の鎮守の森をつくるのです。

先生はガレキを活かした森づくりを提言しています。「私たちは自然と共に生きる知恵の波をつくらなければなりません。」と・・・。

最後に

 徹底した現場主義を貫き通した宮脇昭先生の『見えないものを見る力-潜在自然植生-』の本のあとがきに「土地本来のふるさとの木によるふるさとの森、これが基本です。」とあり、さらに「読んでいただくだけでは不十分です。あなたのできるところからで構わないので、できるだけ楽しく、自信と確信をもって実行し、本書を使いきっていただきたい。」と結んでいます。

  

 宮脇昭先生からいただいた貴重なお考えとエネルギーを当社員や多くの方々にお届けしたく、今回はこの記述をさせていただきました。


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