薬食同次元
春の「陽気」を食べる
やわらかな春の日差しが大気を包みはじめると、冬の間 地下茎や根にたっぷりと栄養分をため込み土の中で小さな芽を準備して、春を待っていた野草たちが一斉に芽を出しはじめます。
春は野原も道端も、ツクシ、タンポポ、ナズナ、ヨモギ、オオバコ、ハコベ、クローバなどの野草でいっぱいになり、私たちは萌え出でたこれらの若菜を摘んで食べることで、冬の寒さで固まっていた身体にビタミンやミネラルを摂り入れ、病気にかからないようにしてきました。
先祖から受け継いできた病気を防ぐ知恵
旬の若菜に含まれた大地の生命力をいただくのは、私たち日本人が先祖から受け継いできたごく普通の風習ですが、春の大地の「陽気」をふんだんに含んだ若菜を食べて病気を防ぐ知恵、いわゆる「未病医学」は、中国医学の基本的な考え方でもあります。
食生活を四季の陰陽に合わせる
薬膳学では、食材と中薬(漢薬)を用いて「陰陽を調和させる」という考え方があり、自然界の陰陽の変化に応じて身体の陰陽も変化しているので、食生活は四季の陰陽に合わせるという「天人合一」を説いています。
春は気候が暖かくなり、万物は生長の時期になり、自然界は「陰消陽長」により、陰気が弱くなり、陽気が増してくるのです。
私たちの身体には気候の変化に応じて生理活動を保つ能力があり、春の陽気を感じると体内の陽気も次第に膨らみ、五臓の内の肝臓の機能が盛んになり、精神も高揚することから、春の養生には、温性で辛味・甘味の食材や中薬を摂るのがよいとされています。
栄養価が高く体を温める効果のあるヨモギ
ヨモギは、キク科の多年草で、生薬
名を「ガイヨウ」と云い、体を温め、止血の効果がある温性・辛味の植物です。冷えによる腹痛、腰痛、生理不順、婦人病、他入浴剤に用います。春先の若芽を摘んで、塩と重曹を加えて湯がき、水に晒してから調理し食用にします。ビタミンA,Cを含み栄養価が高く、あくが強いけれど風味が良いのです。草餅、あえ物、てんぷらにしていただくと口の中は春の香りで一杯になり元気が湧いてきます。
ウイキョウ末にも
さて、当社製造の普導丸に配合のウイキョウ末もセリ科の多年草で、果実を粉末にした生薬です。
胃腸を温め、腹痛を治す芳香性健胃薬で温性・辛味の植物です。
葉をフェンネルと云い、春の野山に生え出てくる野草ですが、甘く強い香りが特徴で、ヨーロッパでは香味野菜として古くから栽培されてきました。
肉や魚料理の付け合わせに又根も香辛料として用います。
日本では「本草和名」(918年)に登場し、古く平安時代から使われてきました。
このお魚との相性抜群のフェンネルをたっぷり使った「お魚のオーブン焼き」はいかがでしょうか。