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薬食同次元

キハダのこと

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5月に入りました。木曽では新緑の時を迎えています。雨が降るたびに、緑が濃くなり、山々がはじけるように美しくなります。植物も動物も皆喜んでいるような、にぎやかな雰囲気が野山に漂っています。

  

さて、弊社では間もなく、キハダの植樹を予定しています。

キハダは、ミカン科の落葉高木で、百草、百草丸、普導丸などの生薬製剤の主原料です。生薬名はオウバクといいます。高齢化などにより、国内産のキハダは年々希少になりつつあります。一方、キハダの成長には約25年の歳月がかかります。

  

弊社の生薬製剤に欠かせないキハダを、自ら植樹し大切に育て、将来の薬づくりに生かしていきたい、これによって先人より伝えられた大事な民間伝承薬を、未来の世代へ継承していきたい、との願いを込めて、これまで毎年継続してきたキハダ植樹を、今年も力を入れて実施することにしました。植樹にあたっては、多くの行政・団体の方々にご協力をいただき、心より感謝申し上げたいと思います。

  

植樹に向けて、キハダについて改めて資料を読み、様々な方々からお話を伺い、整理する機会を得ることができました。キハダの特長や、人々の暮らしとの関わりを再認識する機会となりましたので、その一部をここでご紹介したいと思います。

   

キハダについて

■キハダとは

キハダは、ミカン科の落葉高木である。樹皮の内皮が、鮮やかな黄色を呈していることが名前の由来とされている。

学名はPhellodendron amurense Rupr.である。別名はキワダ、オウバク、オオツキ、オヘギ、シコロ、シケレベ(アイヌ)、ホアンピョクナム(朝鮮)、黄柏、黄檗、黄栢等、数多い呼び名がある。

  

■キハダの形態

キハダは山地に自生している落葉性の高木であり、樹高が25mを越え、直径が1mにおよぶ大樹になることも多い。

そして雌雄異株であるが、一般に雌株は非常に少なく、普通にみられるのは雄株である。

  

【樹皮】

・外皮:厚いコルク質で、深い溝が刻まれている。

・内皮:鮮明な黄色で苦味がある。⇒これが生薬オウバクcrude_drug_202105_kihada_trunk.jpeg

【葉】

・葉は対性、奇数羽状複葉で、長さは15~40cmと大きく、小葉2~6双で形成されている。

【花】

・5~6月ごろに、新しく伸びた枝先や、葉腋から伸びた軸につき、多数の黄緑色の小花をつける。

・雄花と雌花がある。

【実】

・実は直径約1cmの球形である。

・5~6月ごろは黄緑色だが、10月ごろに成熟して黒色となり芳香を放つようになる。

・キハダは隔年結実(果樹の結実が多いときと極めて少ないときとを1年ごとに繰り返す現象)の傾向を示す。

                                      

■キハダの分布

・キハダ属の分布は東アジアに限られる。

・日本国内では、北は北海道から南は九州・四国までわたって自生している。

・海外では、樺太・南千島・朝鮮・ウスリー・アムール地方に多く分布している。

    

キハダの利用について

キハダの内皮は、古来より生薬オウバクとして、苦味健胃、整腸、下痢、消炎、収斂薬などに用いられてきました。民間療法では、胃腸薬のみならず、打ち身、切り傷等への外用薬としても利用されていました。

鮮明な黄色の内皮に薬効があることを、なぜ昔の人は発見したのでしょうか??大変不思議なことです。自然の中で暮らしていた先人の知恵の奥深さを想像します。日本では、約1万年前の縄文時代の居住跡から、壷の中にクリやカシの実と一緒に保存されたキハダの樹皮が発掘されています。その状態から縄文人がキハダの効能を経験的に知っていた可能性が考えられ、考古学上確認された日本最古の生薬とも言われています。

更に、キハダの内皮は、染料としても利用されてきました。また、キハダは材として、工芸品や家具、建材にも用いられています。先日、林業に携わる方から「キハダはケヤキに化ける」という言葉を聞きました。ケヤキといえば、堅く、耐久性に優れ、木目が美しいため、大黒柱にも使われる日本の代表的な木材の一つです。キハダも木目は美しく、心材は緑色がかった特徴的な茶色をしています。

  

キハダを用いて薬づくりを行う私達は、内皮以外の部分についても利活用の方法を知り、自らも模索していくことが、大変重要と考えています。今年の植樹から成長までの25年の歳月の中で、多くのことを学び、また関係機関のご協力をいただきながら、出来る限りの研究も行っていきたいと考えています。

  

キハダと食について

さて、このブログは「薬食同次元」です。最後になりましたが、食についても触れたいと思います。キハダの実や葉は、その独特な香りと味わいから、食用(飲用)にも用いられています。

  

■キハダの実

キハダの実は、木曽地域では、キハダ餅として食べられます。秋になりキハダの実が黒くなった頃、実を採って煮出し、米粉と砂糖を入れて作ります。キハダの実は、苦味がありますが、柑橘系のさわやかな香りもするため、何ともくせになる美味しさです。

木祖村の人に聞くと、キハダの実には、その木によって甘いものと辛いものがあるそうです。甘い実の成る木は、つぐみなどの野鳥が食べてしまうため、すぐ分かるとのことです。鳥と競争で食べる、という話を聞きました。

  

また、他の地域では、キハダの実をスパイスのように用いるところもあるようです。アイヌ文化においては、実が青い時に採り、黒くなるまで乾燥させて、調理に用いるそうです。弊社の本社にもキハダの木があります。今年試してみようかと思います。

  

■キハダの葉

キハダの葉も、実と同様に、柑橘系のさわやかな、甘い香りがします。以前、キハダの葉を焙煎して茶葉にしたものをいただいたことがあります。黄金色のお茶は、ほんのりとした甘味の奥に少しの苦みがあり、大変すっきりと飲みやすいものでした。

  

キハダは知れば知るほど魅力的な木であると感じます。キハダのことをもっと知り、その恵みを余すところなくいただくことができるよう、研鑽していきたいと考えています。

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出典:長野県「長野県の特用林産物 ―キリ、ウルシ、キハダについて―」

   長野県林業指導所「キハダ林造成技術」


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