薬草の花
ニチニチソウ(日々草)【9月】
観賞用、抗がん剤の原料。強い毒性
(写真①:花弁は直径3~5㌢で5裂し、花色もさまざま)
春に植えると秋の終わりまで次々と花が咲き、長期間楽しめるので人気のある、マダガスカル原産の園芸植物である。花が美しいうえ病虫害や暑さに強く、育てやすいのも長所だ。街中でよく見かけるこんな身近な植物から抽出した成分が、意外にも現代医学、特にがんの治療に盛んに用いられている。
ニチニチソウに含まれるビンクリスチン、ビンプラスチンは重要な抗がん剤として、今日ではなくてはならない薬品である。それらは細胞分裂を抑制し抗がん効果を発揮するが、反面、副作用も強いため使用には専門的な知識か必要である。両者は一般的にはビンカアルカロイドと呼ばれるが、植物の分類が変わってビンカは今はツルニチニチソウ属のことで、ニチニチソウの古い属名からとったこの化学分類名は正確ではない。また、ヨーロッパ原産のつる性の多年草であるツルニチニチソウにはビンカアルカロイドは含まれない。
ニチニチソウのほかにも、キョウチクトウ科は多彩なアルカロイドを含む植物が多いことで知られる。インド原産のラウォルフィアからは降圧剤として有名なレセルピンが。さらに、強心剤としてよく使われたストロファンチンもキョウチクトウ科の植物から抽出される。将来もこの仲間の植物から新薬が発見されることが期待されている。
(写真②:初夏から晩秋まで次々と咲くことから日々草の名)
母種のキョウチクトウは高速道路の法面などによく植えられている。インド原産の常緑小高木で、関東地方に行くと初夏にキョウチクトウの赤い花が盛んに咲いていて、塩分や排ガスに強い街路樹として知られる。
Catharanthus roseus キョウチクトウ科ニチニチソウ属
【ミニ図鑑】キョウチクトウ科の一年草。母種は庭や畑の一角などにも栽培される
▶花期 六~十月
(写真③:ヨーロッパ原産のツルニチニチソウ)
出典:「信州・薬草の花」(クリエイティブセンター)
市川董一郎(文)栗田貞多男(写真)