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薬草の花

トチノキ(栃)【5月】

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※トチノキ(栃)は5~6月に花を咲かせます。

花序は二十センチほど、巫女の鈴のよう
(写真①:上向きに咲く円すい花序の花。花も葉も大きい。)

トチノキは、初夏、太い幹をした高木の上部に、房状の乳白色の花を上向きに咲かせる。複総状花序は神事で巫女が舞うとき両手に持つ鈴を連想させるが、長さは二十センチほどもあり遠目にもよく目立つ。近づけば、花の基部の淡紅色がちょっと目を引く。トチノキは大木になり、さらに生育密度も高いため、花の時期には蜂蜜がたくさん採れる。 一方、トチノキの葉は天狗の羽団扇(はうちわ)のような形 (掌状複葉)(しょうじょうふくよう)で、 一枚の長さは最大四十センチほどにもなり、小葉の側脈が並行していて美しい。


秋になると果実は成熟し、やがて肉厚の果皮が割れ、内部の栗の実に似た種子がこほれ落ちる。木の下にはトチの実がたくさん落ちて、「これがクリの実だったらなあ」と思うほどおびただしい。トチの実は縄文時代から食料とされたというが、そのまま食べるにはあまりに苦く渋くて、現代人にはとても食べられない。近世以降はおもに救荒作物として利用されてきた。今は草木灰を溶かした水に数日間さらして渋抜きし、それをトチ餅や煎餅(せんべい)にして土産店で売られる。


日本の民間では、トチの実を乾燥させた粉末を水で練ってしもやけに塗ったり、当薬の粉末と合わせた煎じ液で水虫、タムシの患部に塗るなどの療法がある。さらに、乾燥した樹皮を煎じて下痢や出血に使われたが、いずれの療法も今はあまり行われない。同じトチノキ科のセイヨウトチノキ(マロニエ)の実エキスは、痔核の治療薬として、あるいは外傷後の炎症を抑える内服薬として、今でも使われている。薬効成分はサポニン類、クマリン誘導体である。


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(写真②:トチの実。かつてはトチもちとして食べられた。)

Aesculus turbinata

トチノキ科トチ属
別名 トチ・トチグリ・クワズノクリ 
【ミニ図鑑】一つの果実に胚珠は六個つくが、クリの実大に成熟する種子は一~二個

▶花期 五~六月

crude_drug_230501_tochinoki_3.jpg(写真③:同属のベニバナトチノキ。マロニエとしてパリの街路樹にも。)


出典:「信州・薬草の花」(クリエイティブセンター)
市川董一郎(文)栗田貞多男(写真)


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