薬草の花
ハッカ(薄荷)【1月】

※ハッカの花期は8月~9月です。
爽やかな匂い、仲間はハーブとしても
(写真①:同属のハーブ、ガムなどでおなじみのスペアミント)
子どものころ、用水路のセギは今のようなU字溝ではなかったので、遊び場近くの水辺にはハッカが普通に生えていた。花は野辺ではあまり目立たなかったが、葉をちぎって嗅ぐと爽やかな、今でいうペパーミントの匂いがした。なんとなく近代的な香りで、不思議と心が落ち着いたものである。
ハッカはアジア東北部に自生するハーブの一種で、真っ直ぐに立ちあがった花茎を取り囲むように薄紫色の花を咲かせる。花弁がないため地味だが、拡大してみてば花冠から長く突き出た蕊は可憐である。

(写真②:葉脇に輪状についた小さな唇型花)
ハッカは漢字で書くと「薄荷」で、その昔、ハッカが薬草として珍重され盛んに栽培されたとき、乾燥させて出荷した製品の重量が非常に軽いためにこう名付けられたという。ハッカから精製された精油成分は「メンタ油」で、昔は重要な生薬であった。当時の医者は、散剤を調剤するときは、よく滴瓶に入ったメンタ油を一滴垂らしたものである。薬局はいつもハッカの匂いがした。
主成分は精油のメントールで、薬効はその芳香による。発汗、解熱、清涼、健胃、駆風などの目的で、おもに胃腸薬に用いられる。また薬理的作用を期待する他に、薬物の持つ不快な臭気、味覚を矯正して、薬物投与を容易にする矯正薬として使用されることが多い。
ハーブとして栽培されるミントはハッカの仲間で、その香りを楽しみ、さらに緑の葉をアイスクリームなどの冷菓に添えるのも楽しい。
Mentha arvensis var. piperascens シソ科ハッカ属
別名●メグサ、メハリグサ、メザメグサ 生薬名●薄荷
【ミニ図鑑】同属にはセイヨウハッカ(ペパーミント)とミドリハッカ(スペアミント)がある
▶花期 8~9月

(写真③:8~9月、茎に沿って段々に淡青紫色の小花が密生する)
出典:「信州・薬草の花」(クリエイティブセンター)
市川董一郎(文)栗田貞多男(写真)


