薬草の花
キキョウ(桔梗)【9月】

※キキョウの花期は7月~9月です。
漢方では呼吸器疾患の要薬に
(写真①:5裂した淡い青紫色の花。高原山野に咲く姿は秋の風情)
万葉時代にはアサガオと呼ばれ、秋の七草でいうアサガオは今のキキョウだったそうだ。キキョウはひと昔前まで、あちこちの日当たりのよい草原で咲いているのを見かけた。秋めいてきた高原で咲く淡青紫色の花は爽やかで涼しげであった。それが、徐々に自然の状態では見られなくなってしまい、今は庭先で咲いているキキョウを楽しむしかない。子どものころ、家の庭にキキョウが植えてあった。蕾が膨らんできた開花直前の花を指で摘んで、パチンと破裂させるのが面白くてよくやったものだ。この遊びは、合弁花類の筒状花をもったキキョウだからできることである。
生薬名は「桔梗」(ききょう)あるいは「桔梗根」で、根が結(桔)実して硬(梗) いことに由来する。キキョウは韓国語ではトラジといい、当地では根を塩漬けなどにして食べる習慣がある。根にはサポニンが含まれ有毒だが、ゆでて水にさらせば食べられるので日本でも重要な救荒植物であった。
成分はトリテルペノイドサポニンのプラチコジン、ポリガラシンなどで、鎮痛、鎮咳、去痰、抗炎症、解熱作用などが知られている。漢方では特に呼吸器疾患の要薬として知られ、咳や痰や喉の痛みに、また排膿作用もあるため扁桃炎や皮膚化膿症に使われる。さらに、鎮咳、去痰の家庭薬「浅田飴」や「竜角散」にも他の生薬と混ぜて使われる。
(写真②:よく栽培され、園芸品種には白や淡紅色などもある)
キキョウと名がつく植物のひとつに同じキキョウ科でミゾカクシ属のサワギキョウがある。
キキョウは乾燥した地を好むのに対し、サワギキョウは山地の湿地や水辺に自生し、花は美しい。
Platycodon grandiforus キキョウ科キキョウ属
別名●キチコウ、 オカトトキ 生薬名●桔梗(ききよう)、 桔梗根(ききようこん)
【ミニ図鑑】キキョウ科の植物には、美しい花を咲かせる種が多い
▶花期7月~9月
(写真③:別属のサワギキョウ。湿地や水辺にみられる)
出典:「信州・薬草の花」(クリエイティブセンター)
市川董一郎(文)栗田貞多男(写真)