薬草の花

トウキ(当帰)【9月】

婦人科疾患の重要薬に
(写真①:茎先に密集するシシウドのような白い小花)


セリ科シシウド属のトウキは本州中北部から北海道にかけて分布しているが、『長野県植物誌』によると「南部の渓谷の岩上に生育する」とある。
実際に、私は畑で栽培されているもの以外には山野では見たことがない。
ところで、シシウド属の仲間の植物は花姿が皆よく似ていて、またよく見かける。
そのなかで、母種のシシウドは草原の中でひときわ背が高く目立つし、ノダケは里山にも多い。
そして伊豆七島あたりで栽培されるアシタバは県内にも野菜として出回るようになった。

菅平高原の一角に、 長野県薬草栽培試験地薬草園がある。
ここは、 広い薬草園にさまざまな薬草栽培されていて、今回のシリーズの撮影や執筆取材に大変お世話になった。
夏のある日ここを訪れたとき、 トウキ畑で作業中の方と話をした。
その方は、トウキの葉をちぎって、「匂いを嗅いでごらん。これを風呂に入れるとよく温まるよ」と教えてくれた。
その葉はセリ科独特の、それをさらに強くしたような芳香で、「これは、効きそうだ」と感じた。
この薬草園ではトウキはかなり広い面積で栽位されていた。
現在も漢方薬としての需要は多いそうだ。


crude_drug_201909_touki_2.jpg【花の終った10月ころ、根を掘り採り陰干しする】

漢方処方では、 「当帰(トウキ)」はよく用いられ、「芍薬(シャクヤク)」などと配合されおもに婦人科疾患の重要薬とされている。
根を湯通しして乾燥させたものが生薬「当帰」で、冷え性、月経異常、更年期障害などの人科疾患によく用いられ、家庭薬の原料や浴用剤としても使われる。
当帰の薬効は根に含まれる精油成分とクマリン誘導体に由来する。

Angelica acutiloba セリ科シシウド属 別名●ヤマトトウキ、 オオブカトウキ  生薬名●当帰(トウキ)
【ミニ図鑑】 シシウドは人はあまり食べないが、熊の大好物らしい 花期 八~九月

crude_drug_201909_touki_3.jpg【同属のシシウド。花はよく似ているが草丈2メートル以上にもなる】


出典:「信州・薬草の花」(クリエイティブセンター)

   市川董一郎(文)栗田貞多男(写真)