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薬草の花

アオツヅラフジ(青葛藤)【8月】

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※アオツヅラフジの花期は6月~8月です
冬を待つ、濃い【あい色】の果実
(写真①:細いつるを伸ばして他の樹木にからまる。小花は5ミリほどと小さい)


アオツヅラフジはつる性の矮少低木で、里山の林縁で他の樹木の枝にからまった姿をよく見かける。雌雄異株で初夏に咲く花は目立たないが、広卵形で厚みと光沢のある葉が印象的である。晩秋から初冬にかけて、アオツヅラフジは他の樹木が葉を落としたなかでも、遅くまで藍黒色の果実をつけている。表面に白粉を帯びたヤマブドウのような実は、ちょっとつまんで食べたい誘惑に駆られるが、薬用になっても食用にはならない。

茎や根茎は生薬の「木防已」(もくぼうい)だが、日本の漢方で限られた範囲で使う以外は、あまり利用されてないようだ。成分はシノメニンやマグノフロリンなどのアルカロイドで、解熱や利尿、降圧などの作用か知られている。ツヅラフジ科はメギ科に近い科で、種々のアルカロイドが含まれている。

昔はツヅラフジやアオツヅラフジの蔓(つる)で葛(つづら)を作った。葛は今では見かけなくなったが、衣服を保存したり、持ち歩く際に用いられた。あの「舌切雀」のいじわる婆さんが背負っていたのがその葛である。


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(写真②:径8ミリほどの青い果実。薬用には日干しする)

一方、「つづら折り」という表現があるが、 ツヅラフジの蔓のように山道が折れ曲がる様子を表す言葉である。

アオツヅラフジのことをカミエビとも呼ぶが、果実を噛んで酒を造る、つまり「醸(かも)すエビ (ブドウの古名)」が語源だとする説がある。果実を噛んで壺に吐き出すことで、唾液のアミラーゼが果肉の澱粉を糖化する。それがアルコール発酵で酒になることは、古来より世界中で知られている。

Cocculus trilobus ツヅラフジ科アオツヅラフジ属 別名●カミエビ  生薬名●木防已(もくぼうい)

【ミニ図鑑】花弁のように見えるのは萼片。つるは薬用とともに物入れの葛をつくった

花期▶六~八月

crude_drug_240801_aotudurafuji_3.jpg(写真③:秋、長いつるに沿ってたくさんの実をつける)


出典:「信州・薬草の花」(クリエイティブセンター)
市川董一郎(文)栗田貞多男(写真)


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