薬草の花
ガガイモ【8月】
茎や葉を切ると白い汁。特異な実
(写真①:つるに沿って小さめの総状花序をつける)
ガガイモ科のつる性の植物で、八月ごろ淡い紫色の五裂の可愛い合弁花をつける。花弁の内部に密に毛が生えている。花はあまり目立たないが、秋に実る果実の姿は特徴的だ。鞘は表面に小さな突起が多数ある長さ十センチほどの紡錘形で、やがて裂開すると、綿毛状の種子が飛び散る。子どもたちがよく綿毛を飛ばして遊ぶ。風に飛ばされた綿毛は遠くまで運ばれ、思いがけないところで芽生える。県内では、人里近くのやや乾燥した藪でよく見かける。
ガガイモ科のつる性植物には別項で取り上げたイケマも含まれ、いずれも種子に綿毛をつけ、風に乗って遠くに運ばれる。どちらも薬草として用いられるが、薬効や成分には差異が多い。
(写真②:長さ8~10センチの袋果。先端がやや細長い)
生薬名は全草が「蘿摩(らま)」で、果実(蘿摩子)や葉(蘿摩葉)が利用される。成分にプレグナン誘導体(ステロイド配糖体)が含まれる。蘿摩は一般的には止血、強壮、強精薬として知られ、インポテンツ、帯下、乳汁不足などに用いられる。果実の綿毛はこれを集めて印肉や針刺しの材料に使われるが、傷口を押さえて止血に用いられる。茎を折ると白い乳汁が出るが、これには蛋白融解酵素が含まれ、民間でいぼ取りに用いる。
ガガイモは古名をカガミというが、語源をたどっても鏡に結びつくものがない。一方、地域名としてゴガミなどとも呼ばれ、綿毛をとったあとの種子を胡麻(ごま)に見立て、それが転訛したとする説がある。
Metaplexis japonica
ガガイモ科ガガイモ属
生薬名●蘿摩(らま)
【ミニ図鑑】東アジアの温~暖帯に広く分布する多年草。道沿いの鉄条網などにもよくからまる
▶花期 八月
(写真③:完熟すると割れ、綿毛が風に乗って舞う)
出典:「信州・薬草の花」(クリエイティブセンター)
市川董一郎(文)栗田貞多男(写真)