薬草の花
メギ(目木)【4月】
※メギの花期は4月~6月です
鋭い刺、小枝の先端まで
(写真①:花は黄色い六弁花。吊り下がるような集散花序)
別名はコトリトマラズ、つまり「小鳥さえ止まれない」といわれるのがメギである。なぜなら、枝の先端まで鋭い刺(とげ)があるからで、同属のヘビノボラズも 「蛇も登れず」 の意で同じような刺がある。この自衛のための刺が、思いがけず両種の激減を招いてしまった。高原の自生地が牧場やキャンプ場として利用されるにつれ、駆逐される運命となった訳だ。両種を食草とする高山蝶ミヤマシロチョウも今や絶滅の危機にある。初夏、緑濃く成長した葉の下にひっそりと咲く可憐な黄色の小さな花は、メギの運命を物語る姿かも知れない。 最近の報道によると、入笠高原や八ヶ岳西麓では、メギを保護しミヤマシロチョウの増殖を見守っているが、メギやヘビノボラズは増えたにもかかわらず、チョウの数は増えていないという。心ない一部のマニアの乱獲が原因と聞くと悲しい。
(写真②:メギに産卵する高山蝶 ミヤマシロチョウ)
メギの名称は「目の病気に用いる」 ことに由来する。 メギは漢方薬としては使用されず、民間で眼疾に用いられる。地下茎や茎を細かく刻んで乾燥したものが「小蘗(しょうばく)」で、結膜炎には煎じ液で洗眼する。成分はベルべリンを始めとするアルカロイドで、強い苦味をもち、抗菌、苦味健胃作用がある。 この項では薬草としての利用方法を取り上げたが、激減している現在、使用は控えたい。
カエデ科の樹木にメグスリノキがある。 この植物も眼疾に効果かあるために、こう名付けられた。乾燥した枝や葉を煎じて、ただれ目や結膜炎、ものもらい、白内障の進行止め、肝炎などに内服、あるいは洗眼して使う。成分は葉にトリテルペノイド、 フラボノイド、枝にジアリルへプタノイドなどが含まれる。高原の土産屋で幹や枝を売っているのを見かけたが、この木は秋の紅葉も美しい。
Berberus thunbergii メギ科メギ属 別名●コトリトマラズ、ヨロイドオシ 生薬名●小蘗(しょうばく)
【ミニ図鑑】 メギ科の薬用植物としては、ナンテンやイカリソウがある。
▼花期 四~六月
(写真③:紅葉の美しいカエデ科のメグスリノキ。眼疾に効果)
出典:「信州・薬草の花」(クリエイティブセンター)
市川董一郎(文)栗田貞多男(写真)