薬草の花
ウイキョウ(茴香)【7月】
別名フェンネル。魚の生臭さを消す役目も
写真1:高さ2メートルほどにもなり、真っ黄色の小花を放射状に広げる
その独特な風味、香りは一度覚えれば忘れがたい植物である。
西洋料理ではフェンネルの名で、魚の生臭みを消すハーブとして知られてきた。
セリ科の植物としては大振りな方で、成長すれば人の背丈ほどになる。
さらに、夏に、茎先に密集して放射状に咲く黄色い小花はよく目立つ。
ハーブの仲間のディルに似ているが、ずっと大柄である。
生薬の「茴香(ウイキョウ)」は、秋に成熟した果実(種子)を集めて乾燥したもので、健胃、去痰、あるいは鎮痛薬として用いられる。
薬効成分は精油成分のアネトール、エストラゴール、ピネンなどで、腸の運動を促し、お腹にたまったガスを追い出す作用が知られている。
腹部の痛みを治める作用もあり、さまさまな生薬と配合して用いられる。
ウイキョウは香味野菜としても手軽に利用できる。
茎や白い根は煮野菜や、むいてサラダに、葉はビネガー、オイルの香り付けに使われる。
長野県はじめ、北海道や岩手県などで栽培されており、県内でも家庭菜園に植えられているのをたまに見かける。
地中海沿岸地方を原産とし、とくにヨーロッパではよく使われる。
古代エジプトでも栽培され、中国には四~五世紀に伝わったという。
腐った魚や肉に混ぜると香気を回復するので「回香」と呼ばれたのが「茴香」の語源である。
日本では香味野菜としてのウイキョウの利用は限られているが、それの持つ軽い辛味と、あまりにきつい香りが使いにくさを感ずるのだろうか。
もっと利用されてもよい植物だと思う。
Foeniculum vulgare セリ科ウイキョウ属
別名●フェンネル
【ミニ図鑑】地中海沿岸の原産 ▼花期 六~八月
【よく似たハーブのディール。ふた回りほど小さく草丈1メートル弱】
出典:「信州・薬草の花」(クリエイティブセンター)
市川董一郎(文)栗田貞多男(写真)