薬草の花
シャクヤク(芍薬)【6月】
華やかな大輪、根は多彩に活用
シャクヤクは草丈も大きく花も大振りで、園芸植物として親しまれている。花の色も白、桃色、赤紫色と多彩で、草丈を生かして大振りの花瓶に飾れば部屋の雰囲気がぱっと明るくなる。中国東北部が原産と考えられ、中国、朝鮮半島、日本の各地で薬用、観賞用に栽培され、最近はヨーロッパでも流行して多くの園芸品種が作られている。
種類
長野県北部、特に中野・下高井地方ではシャクヤクの栽培が盛んで、初夏には切花が全国に出荷される。中野市ではシャクヤクが市の花に指定されている。この地方で栽培されるシャクヤクは、一重咲きの和勺(わしゃく)と八重咲きの洋勺である。洋勺は切花や園芸用の苗として出荷される。
漢方としての和勺
和勺は漢方薬としても重要な植物である。花を咲かせないように蕾を取って四~五年栽培し、肥大した根を干したものは「赤巧(せきしゃく)」と呼ばれる。外皮を除いたものは「白勺(びゃくしゃく)」で、これらは用途によって使い分けされる。薬効成分はモノテルペン配糖体のペオニフロリン、ペオノールなどで、鎮痛、鎮静作用を持つ。
白勺は、他の生薬と配合してさまざまな漢方処方に用いられ、その作用も滋養、止痛抗炎症、抗潰瘍、平滑筋弛緩、ほか多彩である。
同じボタン属のヤマシャクヤク
日本には同じボタン属のヤマシャクヤクが自生し、県内でもまれに深山で純白の花を咲かせているのを目にする。
しかし、薬草として利用されることはない。一方、木本植物であるボタンは中国西北部が原産とされ、日本でも観賞用、薬用に広く栽培される。ボタンの根の皮は牡丹皮で漢方薬に広く使われ、成分や薬効はシャクヤクとほぼ同じである。
.深山の林内にひっそりと咲くヤマシャクヤク
観賞用・薬用に広く栽培されるボタン
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Paeonia var. trichocarpa ボタン科ボタン属 別名●エビスグリ、生薬名●芍薬
▼ 花期 六~五月
【ミニ図鑑】原産地は中国北部。属名ぺホニアはギリシャ神話の医神、パイオンからで、西洋でも古くから薬用植物として知られる
出典:「信州・薬草の花」(クリエイティブセンター)
市川董一郎(文)栗田貞多男(写真)