薬草の花
アケビ(木通)【5月】
つるや果実・根も広く利用
アケビの名の由来は、実が開いて中の果肉を見せる意味で「開肉(あけみ)」から、あるいは、ちょっと意味深い「開け窄(すぼ)み」からつけられたともいわれる。小葉が五枚のアケビと三枚のミツバアケビがあるが、ミツバアケビの方が果肉が大きく味がよいので人気がある。さらに、果皮は油で炒めたり、春先に伸びかけたつる(茎)も山菜としてよく食べられる。
芽吹いたばかりのアケビは、花茎の基部から雌花を、先端に雄花をつける。大きく開くのは萼片で、花弁はない。夏には果実は徐々に肥大し、緑色で親指大に成長する。秋になって果肉が割れるころになると、果実は美しい紫色に変わる。高い木にからみついたアケビを採るのも楽しい。
アケビの花ミツバアケビの花
生薬名は【木通(もくつう)】
両種の生薬名「木通」は、太く成長したつるを乾燥したものをいう。一般的には、煎じて用い、成分はへデラゲニンおよびオレアノール酸配糖体(アケビオシド、アケビオサポニン)などで、利尿、抗菌、抗炎症、抗潰瘍、脂質降下などが報苦されている。
アケビは木通のほかに、完熟した果実を乾燥した「八月札(はちがつさつ)」や根「木通根(もくつうこん)」も、民間あるいは漢方'で用いられ、浮腫、排尿障害、皮膚疾患、婦人科疾患等に広く利用される。
アケビの蔓(つる)
アケビの蔓(つる)は物にからまるときには、左巻きである。蔓はさまざまな細工物に用いられるが、それにはミツバアケビの地面を這うものがよいとされる。木曽の漆器でも、木地の周囲にアケビの蔓を編み込んだ食器があるが、軽くて丈夫で使いやすく、なおかつ美術品としての価値もある。
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Akebia quinata アケビ科アケビ属、別名●アケミ、生薬名●木通
▼花期:四~五月
【ミニ図鑑】野沢温泉村のはと車はアケビのつるで作る
出典:「信州・薬草の花」(クリエイティブセンター)
市川董一郎(文)栗田貞多男(写真)