薬草の花
オウレン(黄連)【4月】
白い五弁の花、根茎は漢方の要薬
民間薬で胃腸薬といえば、まずオウレンを思い浮かべる。キンポウゲ科オウレン属の根茎は数珠連ねたように節くれ、折ると断面が濃黄色のため黄連の名がある。母種のオウレンは信州ではやや稀であるが、バイカオウレンは春先に残雪が解けたばかりのぬかるんだ登山道脇でひっそりと咲いているのをよく見かける。初夏の高原ではミツバオウレンが一般的である。以前志賀高原の岩菅山に登った時、この花を見つけた地元の人が、胃の薬になると教えてくれたことがあった。セリバオウレンも県内に生育するが、薬用として栽培もされる。
生薬名は【黄連(おうれん)】
オウレン属の根茎にはアルカロイドのベルべリン、パルマチンなどのほか、酸性物質のフェルラ酸が含まれる。強い苦味のあるべルべリンは、抗菌や整腸作用が報告されている。生薬「黄連」は漢方では整腸、抗炎症、清熱作用を持つとされ、さまざまな生薬と組み合わされ漢方処方の要薬として知られる。民間では整腸、健胃薬として知られるが、結膜炎に煎じ液で洗眼する。
白色の五弁花
オウレン属の花は特徴ある白色の五弁花で、中心に多数の蕊をつけるので、オウレン以外の植物との鑑別は容易である。ただし、花弁に見えるのは萼片で、花弁は小さく一見、蕊にみえる。それぞれの「何々オウレン」の和名が花や葉の形状を表現しているので、見分けるのに役立つ。
高山植物・寒地植物
オウレン属は寒冷を気候を好むため県内では、比較的高い山に分布する。一般的には、「高山植物」と呼ばれるが、このような植物は北地では低地でも分布するので「寒地植物」とも呼ばれる。
Coptis sp. キンポウゲ属、別名●クスリグサ、オウレングサ、生薬名●黄連
▼花期:三~四月
【ミニ図鑑】ベルべリンはキハダやメギにも含まれ、いずれも健胃薬として利用される
出典:「信州・薬草の花」(クリエイティブセンター)
市川董一郎(文)栗田貞多男(写真)