薬草の花
ユキノシタ(雪の下)【1月】
※ユキノシタの花期は5月~7月です。
生や影干しの葉、薬効幅広く
(写真①:晩春から初夏にかけて咲く白い5弁花。下の2弁だけが特に大きい)
やや湿り気のある日陰を好む植物で、民家の庭先によく植えられる。その名の由来には諸説があるが、 一般的なのが「雪の下」説である。常緑で冬の雪の下でも枯れない葉を表現した、あるいは夏には雪のような白い花が咲くことから、とされる。漢名(生薬名)は、「虎耳草」(こじそう)で、葉脈の間に赤褐色のあらい毛が生え、厚み感のある葉の形状からこう名付けられた。緑色と赤褐色の取り合わせがトラの毛皮の縞模様に見え、命名者のセンスが感じられて微笑ましい。
初夏に咲く花は、 五枚の花弁のうち下部の二枚が異常に大きいのか目につく。同じユキノシタ属のダイモンジソウやジンジソウにもこの特徴があるので、花の姿を覚えておくとよい。
葉は食用にもされるが、日陰乾しした「虎耳草」は解熱、解毒、鎮咳、消炎、止血作用があるとされる。民間では煎じて咳、中耳炎、丹毒、痔、膿腫などに用いられた。また、生の葉を火であぶり軟らかくしたものを火傷や凍傷などに、生の葉の絞り汁を中耳炎に使った。無機成分として硝酸カリ、塩化カリが、有機成分として、 フラボノイド類、 アルプチン配糖体、 アルカロイド類などが含まれる。
(写真②:薬用とする葉の形状から「虎児草」の生薬名)
ユキノシタ科の植物には先にあげた種のほかに、 ユキノシタ属では長野県の高山にあるシコタンソウやクモマグサが美しい。ほかに、大きな五枚の葉を車輪状に広げるヤグルマソウ属のヤグルマソウ、チダケサシ属のチダケサシやトリアシショウマ、ネコノメソウ属の仲間、 ウメバチソウ属のウメバチソウやオオシラヒゲソウなど私たちに身近な植物が多い。いずれも花の色は白か淡い黄色である。
Saxifraga stolonifera ユキノシタ科ユキノシタ属 別名●イワタケ、イワブキ 生薬名●虎児草
【ミニ図鑑】 繁殖はイチゴなどと同じで匍匐枝(ランナー)を伸ばしても増える
▶花期 5月~7月
(写真③:秋に咲く同属のダイモンジソウ。花は「大」の字を連想させる)
出典:「信州・薬草の花」(クリエイティブセンター)
市川董一郎(文)栗田貞多男(写真)