薬草の花
カキドオシ(垣通し)【4月】
一面に紫の花、伸びるつる
(写真①:すっと伸びた花冠は長さ2センチほどで、独特の唇形。開花期に株元からから刈り取る)
春、花が咲くころは茎が立っているが、花が咲き終わると茎が地をはって、やぶや垣根を通りするほどに広く繁茂するために、カキドオシと名付けられた。丸みを帯びた葉は大きさが一文銭大で、節々に対生しながら次々とつく様子から連銭草(れんせんそう)とも呼ばれる。花は筒状の唇形をした合弁花で下唇に当たる部分に濃い紫色の模様が入り、庭に植えてもよいほどきれいである。縁がギザギザの優しい感じの葉もユニークで、雑草と呼ぶには惜しい上品さがある。春に花をつけた茎は、枝分かれせすにぐんぐん伸びるが、根から数えて五節より先の葉の付け根には花はほとんどつかない。
カキドオシは、群生地に踏み込むと、メントールのような芳香が漂ってくるので、この植物の存在はすぐに分かる。乾燥させたカキドオシは、一般的には浴用剤として風呂に入れて使われる。ピネンやメントールなどの精油成分が湯に溶け込み、皮膚を刺激して血行を促し、精油の香りが精神を安定させる。カキドオシの薬効はこの芳香が決め手と考えられる。ビタミンCが豊富で、煎じて飲めば滋養強壮に効果がある。また、利尿作用を持ち、呼吸器疾患にも効果があるとされる。この植物は全く毒性がないので 昔から小児の「カンの虫」の薬とされてきた。
(写真②:日当たりのよい野原や道沿いなどに群生する)
同じシソ科の植物でオドリコソウ属のホトケノザは、カキドオシと同じ時期に開花し道端などによく見られる。花茎の最上部二、三段に扇状の葉を対生させ、その上に鮮やかな赤紫色の可憐な閉鎖花を咲かせる。両者の花姿とイメージはよく似るが、ホトケノザには薬草効果はない。
Glechoma hederacea subsp grandis
シソ科カキドオシ属
別 名●カントリソウ、カンキリソウ
生薬名●連銭草(れんせんそう)
【ミニ図鑑】乾燥させたものを連銭草と呼ぶ。シソ科の植物は芳香を持つものが多い
▶花期 四~五月
(写真③:同科オドリコソウ属のホトケノザはカキドオシと花姿のイメージが似ている)
出典:「信州・薬草の花」(クリエイティブセンター)
市川董一郎(文)栗田貞多男(写真)