薬草の花
オオバコ(大葉子)【5月】
※オオバコの花期は4月~9月です
身近な植物、葉や種子に効用
(写真①:未舗装の車道や野道などによく生える)
子どものころにオオバコの花茎を二人で引っ張り合って遊んだことは、どなたも経験があると思う。中野市周辺では、この遊びをギッコンバッコンと呼んでいた。昭和二十年~三十年代にはオオバコは、薬草として盛んに使われ、学校の備品購入のために子どもたちはよく採取したものだ。
オオバコは私たちにとって身近な植物だが、不思議なことに道端の硬い地面に好んで生える。種子は粘液多糖類を含み粘着性を持つため、靴裏に付着して人の歩く場所で発芽する。その性質のため人通りの多い高山でも繁茂し、環境汚染の犯人にさせられたりもする。
(写真②:花茎の先端に白い小花を穂状につけ、下から順に咲かせる)
生薬名の「車前草」(しゃぜんそう)はその性質に由来する。種子は「車前子」(しゃぜんし)で、いずれも漢方で利水、清熱、去痰作用を持つとされ、浮腫や膀胱炎、咳嗽(がいそう)に使われる。民間では生の葉を火であぶり腫れ物に貼る。成分はイリドイド配糖体のオークビンやプランタギニンのほかに、フラボノイドやウルソール酸である。
オオバコの名の由来については、どこを見ても記載されていないが、私見を述べたい。オオバコの「ハコ」はハコベの「ハコ」と同じではないだろうか。 ハコは帛(はく)のことだという中村博士の説は、「ハコベ」の項で説明した。オオバコの根生葉の葉柄の付け根を爪で傷つけて強く引っ張ると、白い糸を引くように内部の管束が引き出される。この現象をとらえて「帛」の字を当てたと思われる。ただし「オオ」に関しては、葉が大きいとか、管束が太いとか考えられるが不明である。
Plantago asiatica オオバコ科オオバコ属 別名●オンバコ、カエルッパ 生薬名●車前草(しゃぜんそう)、車前子(しゃぜんし)
【ミニ図鑑】 車前草エキスは、鎮咳、去痰剤のフスタギンとして、最近までよく使われた。
▼花期 四~九月
(写真③:)葉柄に傷をつけ強く引くと管束が引き抜かれる
出典:「信州・薬草の花」(クリエイティブセンター)
市川董一郎(文)栗田貞多男(写真)