薬草の花

イカリソウ(碇草)【3月】

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(写真①:四方に張った長さ2センチ近い長い距)
いかりに似た姿、強壮効果も


春の里山、芽吹きも真っ盛りの林床にこの花を見つけると心がはずむ。明るい紅紫や淡黄、白色など花色は近縁種の違いや生育地の違いで異なるが、茎の先端に下向きに咲く花は船の碇にも似てユニークである。イカリソウの名はその花の形からきている。花弁の付け根の一部が長さ二センチほど外側、前方に飛び出しているが、それは距(キョ)と呼ばれる。距は内部に蜜が貯められていて、昆虫が距の内部の蜜を求めて花弁の内側から深く潜り込むため、受粉が確実に行われる仕組みである。距を持つ植物は種々あるが、スミレ、ツリフネソウ、オダマキなどがあげられる。


イカリソウは古来から強精強壮の薬としても、よく知られてきた。『本草綱目(ほんぞうこうもく)』という中国の古い書に「淫羊(いんよう)」という精力絶倫の薬効をもたらす生薬がでてくるが、これは中国産のホザキイカリソウのことである。日本に自生する数種のイカリソウも同様な成分を含んでいることから同じ生薬名で呼ばれている(ただし、ホザキイカリソウの花はいかり形をしていない)。

crude_drug_202003_ikariso_2.jpg(写真②:高さは20~40センチほど。時に大きな株状になる)


乾燥して市販され、特有の配糖体イカリインなどを含み、煎じて苦味健胃、低血圧症、強壮などに服用し、氷砂糖とともにホワイトリカーに入れたイカリソウ酒は不眠症に用いられる。


イカリソウはメギ科の草本である。メギ科植物はあまりなじみがないかもしれないが、本著で取り上げたメギ、ナンテンのほかに、初夏の深山に咲くサンカヨウや、めったに見られないトガクシショウマなどがある。メギ科の植物は、種々のアルカロイドやフラボノイドを持つものが多い。


Epimedium grandiflorum メギ科イカリソウ属 別名●サンシクヨウソウ 生薬名●淫羊蘒(いんようかく)
【ミニ図鑑】淡黄色の花色のキハナイカリソウも山野にみられる。メギ科の多年草
▶花期 四~五月


crude_drug_202003_ikariso_3.jpg(写真③:キバナイカリソウ。県内各地にも多い)

出典:「信州・薬草の花」(クリエイティブセンター)
   市川董一郎(文)栗田貞多男(写真)