薬草の花
サンショウ(山椒)【2月】
※サンショウ(山椒)は四~五月に花を咲かせます。
香辛料・山菜・薬草として...
(写真①:花は黄緑色で小さく、花弁はない。一見すると花が散った後のよう)
サンショウは山菜として、また薬草として広く用いられる植物で、里山ではどこでも見かける。初夏、芽吹いたばかりの若葉は「木の芽(このめ)」と呼ばれ、摘み取ると特有の香りがする。そのまま若竹煮などの季節の料理に添えたりして楽しめる。
雌雄異株で、若葉が開くと間もなく開花するが、雄花雌花ともに花弁がなく細く短い蕊(しべ)だけで構成されるため目立たない。この時期までなら、柔らかい茎や葉を細かく刻んで、砂糖、みりん、味噌とかき混ぜて、豆腐につければ手軽な田楽料理が楽しめる。
秋に果実は赤く熟し、やがて内部の黒く硬い種皮で覆われた種子が露出してくる。完熟前の果皮や種子は香辛料として使われ、信州名産の七味唐辛子にも配合されている。試みに果皮をかじってみると、最初は感じないが、やがてしびれるような辛さがロの中に広がる。
(写真②:秋、果実はまっ赤に色付き、たわわに実る)
生薬「山椒(さんしょう)」は完熟前の果肉で、芳香辛味健胃薬として漢方処方、家庭薬に加えられ、食欲不振、消化不良に応用する。漢方では、鎮痛、鎮咳、駆虫薬として使われる。成分は精油としてシトネラールなど、辛味成分としてサンシオールⅠ、Ⅱなどである。
サンショウは利用価値のある小灌木なので、庭先に一本植えておくとよい。ただし気をつけないとアゲハチョウの幼虫が葉を食いつくしてしまうことがあり注意が必要だ。同属のイヌザンショウは姿形が似ているか こちらはほとんどサンショウ独特の香りかしない。
Zanthoxylum piperitum
ミカン科サンショウ属 別名●ハジカミ、サンショ
生薬名●山椒(さんしょう)
【ミニ図鑑】雌雄異株で小枝先端に円錐花序をつける
▶花期 四~五月
(写真③:果実が熟すと裂けて、つやのある種子が飛び出す)
出典:「信州・薬草の花」(クリエイティブセンター)
市川董一郎(文)栗田貞多男(写真)