薬草の花

アセビ(馬酔木)【2月】

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(写真①:春、枝先に白い壷形の小花を密集する)


全草有毒。殺虫や駆虫に

漢字表記が「馬酔木」と書くことより、この樹木は有毒であることは推測できる。一般的にツツジ科の植物はアズマシャクナゲやレンゲツツジのように葉が有毒の種が多い。ウマやウシが誤ってアセビの葉を食べると麻痺することからアシシビレと呼ばれ、それがアセビに転訛したものである。奈良公園ではシカがアセビの葉を食べないので広く繁茂していることはよく知られている。


アセビは暖かい地方では山地に広く自生するが、長野県でも北部を除く山地の岩の多い風衝地に生える。それよりも、街中で植えられているのをよく見かける。アセビの葉はドウダンツツジに似てつやがあり硬く、冬も落葉しないので庭木として愛好される。春先に白い鈴のような小花が並んで下垂し、その花姿は美しい。たとえ、早春に遅い雪が降っても花は枯れることなく咲き続け、その様はけなげである。ちなみに中国の馬酔木は別種で、花序は下垂せず直立する。

crude_drug_202002_asebi_3.jpg(写真②:秋には蕾をつけた花穂が延びる)


有毒植物のため薬草として利用されることはないが、毒性は各種の昆虫にも強く働くので、粉末および葉を煎じた煎液は農用殺虫薬として、牛馬の皮ふ寄生虫あるいは農作物の害虫防除、便槽のウジ駆除に古くから用いられた。


成分はジテルペノイドのアセボトキシンやグラヤノトキシンなどのほかに、アセポチンやタラキセロールなどが葉に見出されている。中毒すると、悪心、嘔吐、腹痛、下痢、痙攣、四肢麻痺、呼吸麻痺をきたす。


Pieris japonica ツツジ科アセビ属  別名●アセボ、アシビ、ウマクワズ
【ミニ図鑑】山野に自生するが、庭や公園にも栽培される
▶花期 二月~四月


crude_drug_202002_asebi_2.jpg(写真③:同じツツジ科のレンゲツツジも有毒。ウシも食べないので牧場ではよく繁殖する)


出典:「信州・薬草の花」(クリエイティブセンター)

   市川董一郎(文)栗田貞多男(写真)