薬草の花

ウスバサイシン(薄葉細辛)【2月】

地味な花、根はたくましく

ウスバサイシンは早春、やや湿り気を帯びた雑木林の林床に葉を広げ、根元近くに地味な紫褐色の花をつける。
まだ枯葉色の多い林内で新緑の葉はよく目立つが、花は葉柄の付け根に一輪だけ隠れるように咲いている。
和名の 「薄葉(うすば)」 は同亜科のカンアオイ (後記) に比べ葉が薄いことから、「細辛(さいしん)」とは根が細く噛むと辛いことから名付けられた。
春先、この葉裏には、直径一ミリほどの真珠のようなヒメギフチョウの卵が産み付けられていることがある。
花はチョウを呼ぶにはあまり目立たないほど地味だが、果実はアリの好物で巣に運び込まれ、そこで発芽する。

crude_drug_201902_usuba_2.jpg

細辛は民間薬というより、漢方薬の重要な薬草として利用されてきた。特に体力の低下した人の風邪の症状に、他の生薬と合わせて用いられる。
そのなかでも、漢方処方の麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)は全身倦怠、脈が細く力がない人ののどの痛み、せき、鼻炎症状、悪寒に使われてきた。
根に精油を含み、その成分はメチルオイゲノール、アサリニンなどである。

ウマノスズクサ科カンアオイ亜科は、フタバアオイ属、 ウスパサイシン属、カンアオイ属に分類される。
アオイとは冬も葉が枯れないことから付けられた名で、徳川家の家紋はこの葵(あおい)である。
「フタバ・・・」 は茎から葉が二枚出て冬に枯れるから、「カン・・・」は冬も常緑であることを意味する。
これらの仲間はどれもよく似ていて、特にカンアオイ属は種が多く見分けが難しい。
一般的にはカンアオイはギフチョウの食草で、ヒメギフチョウの幼虫はウスパサイシンの葉を食べる。

crude_drug_201902_usuba_3.jpg

Asiasarum sieboldii ウマノスズクサ科ウスバサイシン属
別名●サイシン 生薬名●細辛(さいしん)

【ミニ図鑑】低山地の林床や林緑に自生する。春一番に心臓形の葉を広げる ▽花期 三~五月


出典:「信州・薬草の花」(クリエイティブセンター)

   市川董一郎(文)栗田貞多男(写真)