薬草の花
サンシュユ(山茱萸)【2月】
春一番に咲く庭木、果実は薬効多彩
サンシュユは花木として広く植栽され、信州でもよく育つ親しみ深い樹木である。もとは中国、朝鮮原産で、江戸中期に薬木として渡来した。ハルコガネバナ(春黄金花)やアキサンゴ(秋珊瑚)とも呼ばれ、他の花木に先駆けて春一番に花が咲く。米粒のような花が集合した散形花序で、明るい黄色が印象的である。そして、秋には真っ赤に熟した液果を、枝いっぱいに実らせる。果実の姿が派手なわりに秋遅くまで木についている。試しに口にしてみたら、内部の核が硬く大きく、果肉は甘み、酸味が薄いのが鳥たちに不人気の理由のようだ。それでも初冬のある日、気がついたらヒヨドリたちにあっという間に食べ尽くされてしまっていた。
生薬名は【山茱萸】
生薬名の「山菜與」は、赤く熟した果肉を乾燥させたものである。古くから、強壮薬として、あるいは腎臓、膀胱などの泌尿器の疾患によく用いられてきた。漢方処方では、有名な「八味地黄丸」などに処方され、民間では液果を酒に漬けて滋養薬とする。成分は、イリドイド配糖体(ロガニン、スエロシド)、タンニン類、サポニン類などである。
葉の特長
子どものころ、いたずらっ子にサンシュユの葉の裏でほっぺたを思いっきりこすられて、悲鳴を上げたことがある。サンシュユの葉裏の側脈のわきには褐色の毛が生えていて、これが軟らかい皮膚に刺さるとひどく痛い。そして、サンシュユの葉を観察すると、葉柄近くから派生した側脈は葉の周囲をとり圃むように葉の先端に向けて伸びていて、他のミズキ科の植物の葉と同じ特徴を有している。
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Cornus officinalis ミズキ科 ミズキ属、別名●ハルコガネバナ、アキサンゴ、生薬名●山茱萸
▼花期一二〜四月
【ミニ図鑑】同じミズキ科の植物では、ヤマボウシ、ハナミズキなどがお馴染
出典:「信州・薬草の花」(クリエイティブセンター)
市川董一郎(文)栗田貞多男(写真)