薬草の花

ヒキオコシ(引起)【1月】

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起死回生のカ
(写真①:高さ1~1.5メートル、山地の道ばたなどにすらりと直立する)


ヒキオコシの名は 「弘法大師が病に倒れた行者にこの葉の汁を飲ませたら起き上がった」という故事に基づくとされている。同じ意味で「延命草(えんめいそう)」 とも呼ばれる。県内には同じ薬効を持つクロバナヒキオコシが北部に分布し、他の地域では母種のヒキオコシが一般的である。草丈が1㍍ほどになるが、そのわりにどちらも花が地味なので、気付かれすに見過ごされてしまうのが残念である。同じ仲間にヤマハッカがあるが、こちらの方が県内の里山には一般的で、また花が美しいのでよく目立つ。しかしヤマハッカには薬効はない。


ヒキオコシはジテルペン系の苦味(くみ)質を含むので、葉を噛むと強い苦味がある。この苦味が食欲増作用をもたらし、古くから民間薬としてよく用いられてきた。「良薬はロに苦し」 とよくいわれるが、胃腸薬として用いられてきたキハダやオウレンと同じ使われ方である。ヒキオコシに含まれるジテルペン系の苦味質の中のエンメインとオドニシンには、薬理実験で抗菌作用と抗腫瘍作用が認められるという。



crude_drug_202001_hikiokoshi_2.jpg(写真②:花冠の長さ5~7ミリ、淡青紫色の小花を花茎に沿ってつける)


全草を乾燥させたものが生薬「延命草」だが、乾燥させると葉が落ちやすい。しかし有効成分は葉に多いので注意が必要である。


ヒキオコシはシソ科だが、ゴマノハグサ科にヒキヨモキかあり、こちらの語源は 「茎をもって引っ張ると内部の管束か引き抜かれるからこう名付けられた」と、 植物学者の中村浩博士は言う。確認したわけではないが、ヒキオコシも同じ現象があって、こうつけられたのかも知れない。


Rabdosia japonica シソ科ヤマハッカ属

別名●エンメイソウ 生薬名●延命草(えんめいそう)
【ミニ図鑑】同属に葉の先端がカメの尻尾の様に突出するカメバヒキオコシがある
▶花期 九~十月

crude_drug_202001_hikiokoshi_3.jpg(写真③:県北部に見られるクロバナヒキオコシ。花はゴマ粒ほど)


出典:「信州・薬草の花」(クリエイティブセンター)

   市川董一郎(文)栗田貞多男(写真)