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薬草の花

ハシリドコロ(走野老)【12月】

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※ハシリドコロ(走野老)は四~五月に花を咲かせます。


誤食すると興奮・昏睡、死の危険に
(写真①:春、釣鐘状の花をつける。花弁の外側は暗紫色、内側は淡緑黄色。)

春の芽吹き時、地面にはあまり他の草が生えていない時期に、真っ先に芽生える植物である。山菜の時期には少し早いが、あまりに勢いよくすくすく伸びるところを見つけると、素人はつい摘み取って食べてみたい誘惑にかられる。ところが、それは大間違い。不用意にこの植物を食べようものなら、幻覚を起こしたり、あるいはあたりを走り回って苦しむことになる。ハシリドコロのハシリとはこのことに由来するらしい。トコロはヤマノイモ科の根の肥大を表すトコロ (トロロ)と同じ意味でつけられたとされる。試みに肥大した根茎をつぶしてみたが粘り気はなかった。


葉の芽生えの逞しさに比べ、花はごく地味で目立たない。茶色がかった紫色は黒ユリの花の色を連想させる。最近の信州ではニホンシカが急激に増えてあちこちでその食害が問題になっているが、シ力はハシリドコロを食べないので、春先の里山ではあちこちでハシリドコロの株が目立つ。

crude_drug_201201_hashiridokoro_2.jpg(写真②:開花前のつぼみ。色調はナスの花の色に似ている)


先に述べたとおりハシリドコロは誤って食べると中毒を起こす毒草だが、一方では重要な生薬「ロート根(こん)」の原料でもある。製剤名は「ロートエキス」で、胃腸の痛み止め、つまり鎮痙剤として有名であるロート根にはアトロピンやスコポラミンなどのアルカロイドが含まれ、いずれも強力な副交感神経遮断作用を持つ。ロートエキスは消化液分泌抑制、鎮痙作用を持ち、胃酸過多、胃痛、胃十二指腸潰瘍に用いられる。またアトロピン点眼薬は瞳孔を散大させ、スコポラミンには鎮静催眠作用がある。ハシリドコロは毒草だが、ナス科の植物には有毒のアルカロイドを含む種が多い。


Scopolia japonica
ナス科ハシリドコロ属 別名●サワナス、オメキグサ 生薬名●ロート根(こん)
【ミニ図鑑】根と根茎からとるロート根は鎮痛・鎮痙の重要な生薬原料。だが民間での使用は厳禁
▶花期 四~五月

crude_drug_201201_hashiridokoro_3.jpg(写真③:ナスの花。ナス科の花にはアルカロイドを含む種が多い)


出典:「信州・薬草の花」(クリエイティブセンター)
市川董一郎(文)栗田貞多男(写真)


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