薬草の花

マンサク(満作)【1月】

早春の里山、春一番に咲く
マンサクはまだ風の冷たい早春に、他の樹木に先駆けて咲く。枝いっぱいにつけた明るく黄色い花を見ると心が温まる。
その名の由来は、春が来て「まず咲く」の意味からとされるがすっきりしない。植物学者の中村浩博士は、「花の形が『粃(しいな)』の集合に見えるので地方では『シイ花』とも呼ばれるが、忌詞(いみことば)なので逆転し、『豊年万作』にかけてこう呼ばれた」と説明する。


マンサクは長野県ではおもに東部、中部以南に分布するが、北信とくに多雪地帯では、同じ仲間で葉が小さく厚手のマルバマンサクが残雪の中で花を咲かせる。
この時期、飯山市鍋倉山麓を散策すると周囲の樹木はまだ固く芽を閉ざすなかで、 マルバマンサクだけは開花している。
一見、花弁に見まがう四枚のひらひらは実は萼片(がくへん)である。
これは「削り節」、あるいは「アイヌの人が祭祀のさい使う御弊(イナウ)を小さくした細工物」のように見え、近づいてよく見れは美しい。
マンサクの材は淡黄色で、強靭で折れにくい。
昔は炭俵の上下の輪形のふたの材料に使われた。
また、山を歩くと立木を捻じ曲げて輪を作って目印に使われているのを見かけるが、そんなことから北信では「ねじり木」とか、「輪柴(わしば)」などと呼ぶ。
crude_drug_201901_mansaku_2.jpg
マンサクの属名はハマメリスである。
ハマメリス葉は日本ではほとんど使われないが、メキシコや北米では収れん、 止血、止瀉薬として、煎剤を赤痢や細菌性下痢に内服、あるいは痔の座薬、湿疹などの軟膏に配合する。
成分はほとんどがタンニンであり、薬剤としての利用もそれに由来する。
crude_drug_201901_mansaku_3.jpg出典:「信州・薬草の花」(クリエイティブセンター)
   市川董一郎(文)栗田貞多男(写真)