>>会員登録いただくと生薬ブログ最新情報をメルマガにてお届けします!メルマガ登録で更に300ポイントプレゼント!

生薬の話

キハダの実に学ぶ

crude_drug_230101_kihada.jpg

あけましておめでとうございます。

素晴らしい新年をお迎えのことと思います。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

  

今年もキハダに始まり、キハダとともに歩む一年となりそうです。

今回はキハダの実についてお話いたします。

  

キハダは「隔年結実(かくねんけつじつ)*」の傾向にあると言われています。「実が多いときと、極めて少ないときとを1年ごとに繰り返す現象」のことで、おおよそ2年に一度花を咲かせ実を結ぶ、ということです。この様子を確認しようと、昨年から弊社本社のキハダを観察し記録しています。更にキハダは「雌雄異株(しゆういしゅ)*」とされています。雌花と雄花が別の木につくということで、本社のキハダについて雌の木と雄の木を特定することも目的の一つです。

  

本社には、12本のキハダの成木があります。まだ調査期間が2年のため浅く、樹木の学術的・専門的な知識もありませんが、今年の調査状況は下記のようになりました。様々な面白い事象が見られました。

   

観察記録

番号はキハダに付与した番号。「2021年 / 2022年」の順に花と実の様子を記載

①:雄花 → 実が一房程度認められた   / 雄花 → 実が一房程度認められた       

②:雄花 → 実目視できない       / 花目視できない → 実目視できない       

③:花目視できない → 実大量      / 花目視できない → 実が一房程度認められた   

④:花目視できない → 実目視できない / 花目視できない → 実目視できない       

⑤:花目視できない → 実少量     / 花目視できない → 実が多数認められる    

⑥:雄花 → 実目視できない     / 花目視できない → 実目視できない       

⑦:雌花 → 実は少量     / 花目視できない → 実目視できない       

⑧:雌花 → 実は大量     / 花目視できない → 実が一房程度認められた   

⑨:花目視できない → 実目視できない  / 雄花 → 実目視できない                     

⑩:雄花 → 実目視できない  / 雄花 → 実目視できない            

⑪:雌花 → 実大量  / 花目視できない → 実が一房程度認められた  

⑫:雄花 → 実目視できない / 雄花 → 実目視できない            

※実が一房程度認められた:実の数は1~10個程度。緑の枝に生っていることが多い

※花目視できない:実際に咲かなかったことに加え、高所のため観察が困難、または時期が遅く散ってしまった等の理由も含まれる

crude_drug_230101_kihada_fruit.jpg

観察記録より導き出されること

1.雌の木と確認できたキハダ:③⑤⑧⑪

 雌花または実を2年連続で確認できたため雌の木と確認。いずれも隔年結実の傾向が見られる。③⑧⑪は今年は裏年(実がほぼ生らない年)。⑤のみ今年は生り年。来年については引き続き調査が必要

2.雄の木と確認できたキハダ:⑩⑫

 雄花または実を2年連続で確認できたため雄の木と確認。

3.雌の木と思われるキハダ:⑦

 1年目に雌花が咲き、実が生ったため雌の木と思われる。1年目は実が少量で、2年目は目視できないため隔年結実は1年おきではない可能性もあり。来年引き続き調査が必要

4.雄の木と思われるキハダ:①

 2年連続雄花が咲いたため雄の木と思われる。一方で2年連続実も一房ほどつけたため引き続き調査が必要

5.雄の木と思われるキハダ:②⑥⑨

 雄花が2年中1年は目視できた。来年再度観察を試みたい

6.雌雄不明のキハダ

 2年連続花も実も目視できていない。来年再度観察を試みたい

※3年中、2年について花または実を目視できた場合に、雌雄を確認できたものとする。

まとめ

・12本中、6本について雌雄を確認することができました。残り6本については、引き続き観察と調査が必要です。

・雌の木と確認できた4本について、現時点では隔年結実の傾向が見られています。今年は「生り年」のキハダが1本、「裏年」のキハダが3本でした。

・個体によって生り年と裏年が異なるとの結果が見られています。ただし、ばらばらというより大多数の個体は一致する可能性があります。本社のキハダのみならず、村内のキハダも昨年生り年で今年裏年のものが多いことからも、全体としての傾向が存在する印象を受けています。引き続き調査し確認していきたいと思います。

・なお、実が一房程度認められる枝は色が緑です。裏年において実がつくのは、その年の新芽の可能性もあります。

・2年連続で雄花が咲いたにもかかわらず、昨年も今年も、実を一房程度つけたキハダがありました。雄花が咲いたため雄の木と思われるのですが、なぜ実をつけるのかはわかっていません。引き続き観察を継続していきたいと思います。

・雌の花をつけたため雌の木と思われますが、1年目は実が少量で、2年目は実が目視できない木もありました。隔年結実といっても、1年おきではない可能性もあります。これも来年以降も観察を継続し確認していきたいと思います。

  

おわりに

キハダの花や実のなる様を見ていると、自然のものは多様性にあふれていることを改めて感じます。大半の雌の木は今年が裏年なのに、一本だけ沢山の実をつけた雌の木があったり、雄花が咲いているのに実が生る木があったりと、個体ごとに個性豊かです。

  

そして「隔年結実の傾向」、というのも興味深いです。1年おきになってしまうのは果実の発育中に始まる花芽分化のため栄養分が不足するためとのことです。しっかり集中して花と実をつける年を過ごしたら、次の年はよく休み、エネルギーを蓄えるようです。更に、キハダは"おおよそ"1年おき"くらい"に実をつける、ということでもあります。きっちり1年ごとと決まっているわけでもないようです。

  

キハダを見ていると、何か少しほっとした気持ちになります。同じキハダでも、個々の木のありのままの姿は多様であり本当に個性豊かです。同じ木はひとつもありません。そして、実があふれるばかりに沢山生るのは大体1年おき。それ以外の時は静かに過ごしています。人間は、一年の単位で働いたり休んだりは中々難しいですが、もう少し短いスパンの中でメリハリをつけて過ごすこと、よく働き、よく休むことが大事と思います。大きな成果を出すためには、焦らず、ことさら多くのことをせず、のんびりする時期も必要なこと、それは人それぞれで良いのだ、ということを教えてくれているようです。何かと忙しい時代ではありますが、人間も自然の一部ですから、少し立ち止まって身の回りを見渡す心の余裕を常に持ち続けたいものです。

  

新しい年のはじまりに、新たな気持ちで一年を展望されている方も多いと思います。どうかご健康で良い一年を過ごされますようにお祈りしております。


*隔年結実:果樹の結実が多いときと極めて少ないときとを1年ごとに繰り返す現象。ミカン・カキ・クリなどにみられ、果実の発育中に始まる花芽分化のため栄養分が不足し、豊作の翌年は不作になる。隔年結果。 

*雌雄異株:単性花をつける植物で、雌花と雄花を別々の個体につけること。また、その植物。イチョウ・ソテツ・アサなど。雌雄別株。

出典:デジタル大辞泉


日野製薬オンラインショップ

>>会員登録いただくと生薬ブログ最新情報をメルマガにてお届けします!メルマガ登録で更に300ポイントプレゼント!