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生薬の話

天然物を扱うということ

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 秋色の日射しが容赦なく照りつける日中ですが、朝夕はめっきり涼しくなりました。山の冷気を含んだ涼やかな風が吹いてくると、本格的な秋の到来を感じます。

  

 さて、お客様から「百草丸は天然の薬なのに、なぜ添加剤を加えているの?」とのご質問をよく受けます。多くの方々が「なぜ?」と思われていると思います。

 それで、今回は「なぜ添加剤を加えるのか」の一端と「薬に使用する添加剤」の話と「弊社の天然物を扱う上での基本的な考え方」を記述したいと思います。

なぜ添加剤を加えるのか

 百草丸の主原料は、キハダの樹の皮を剥いで乾燥させた生薬オウバクです。百草丸は、このオウバクの水性エキス(オウバクエキス)に粉末の生薬を6種類加えて練り合わせて丸い粒にするのですが、結合力が弱く、どうしても上手くまとまらないため、添加剤を加えて、結合力を高め、丸剤としての型を維持するようにしています。

 一方、普導丸の主原料もキハダの樹の皮を剥いで乾燥させた生薬オウバクなのですが、こちらは、結合力が強く、丸剤としてのまとまりがよいので、結合力を高めるための添加剤は加えていません。普導丸の場合は、オウバクの水性エキス(オウバクエキス)ではなく、オウバクの粉末に6種類の粉末生薬を加えて水だけで練り合わせて丸い粒にしているのです。(※仕上げのコーティングには添加剤を使用しています)

  

 オウバクは、主成分のベルベリン、苦味成分、粘液成分などで構成された生薬です。このオウバクに水を加えて抽出したエキスを煮つめていくと強い粘着性を示し、さらに煮つめていくと艶のある黒い塊となります。この黒い塊を板状にしたのが百草(オウバクエキス)ですが、この百草(オウバクエキス)は、飲みにくいのが難点で、この飲みにくさを克服するために、他の粉末生薬を混ぜ合わせて丸剤にしたのが百草丸です。したがって、百草丸の主成分には『百草(オウバクエキス)を使用する』のが適切であると考えるのです。

 オウバクは水を加えると粘着性を示す生薬ですから、オウバクエキスにもオウバク末にも粘着性がありますが、なぜオウバクエキスを主成分とした百草丸はまとまりが悪く、オウバク末を主成分とした普導丸はまとまりが良いのか。百草丸と普導丸では、①主成分と他の粉末生薬との混合手順が異なる。②水分の配合手順及び配合量が異なる。③配合成分が異なる。と様々ありますが、未だ理由が明確になっていません。オウバクエキスは、水抽出という過程を経ており、同じ原料のオウバクを使用していても、製法がオウバク末とは異なり、エキスの成分構成と粉末の成分構成が異なることが要因の一つの可能性がありますが、定かではありません。また、作用機序についても差異があるのではないかと思っています。

 したがって、弊社は、有効成分のオウバクエキスをオウバク末に変更するのではなく、添加剤を加え『オウバクエキスを使用して百草丸をつくる』ことにこだわり百草丸をつくり続けています。百草丸の主成分には『百草(オウバクエキス)を使用する』のが適切であると考えるのです。

  

 多成分で構成された『天然物を扱う』ということは、計り知れない奥深さと難しさがありますが、自信をもっておすすめできる製品をつくるため、探究を続けていきたいと思っています。

薬に使用する添加剤

 現在、薬に使用する添加剤については「その製剤の投与量に薬理作用を示さず、無害でなければならない。また、添加剤は有効成分の治療効果を妨げ、又は試験に支障をきたすものであってはならない」という規定が、公定書(日本薬局方)にあり、その使用量についても、上限値が定められています。したがって、薬に使用している添加剤は、危険なものではなく、むしろ、必要に応じて適切に添加剤を使用することで、薬の有用性を高める、製剤化を容易にする、品質の安定化を図る、または外観をよくする目的で用いるとされています。添加剤は、薬に含まれる有効成分以外の物質ですから、これを上手に活用することで、より品質の確かな製品を安定的に生産することが可能となるのです。技術革新により開発された添加剤は、安全性についても確実なものとなっているようです。

弊社の天然物を扱う上での基本的な考え方

 とは申しましても、弊社は、天然物を使用しての製品の製造業ですから『出来るだけ添加剤を加えない、または、加えるとしても天然物もしくは天然由来の添加物を使用する』という考え方を基本において製造していきたいと考えています。

  

 今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

  

参考文献:『日局製剤総則』『医薬品添加物事典2021』より


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