>>会員登録いただくと生薬ブログ最新情報をメルマガにてお届けします!メルマガ登録で更に300ポイントプレゼント!

生薬の話

キハダの黄色

crude_drug_230701_kihada_1.JPG

 梅雨の合間の晴れた日は、山々の緑は一層濃く、青く輝き、夏の訪れが間近であることを感じます。

  

 2023年6月24日、キハダの皮むきを行いました。キハダの周皮を除いた樹皮(内側の皮)は、とても鮮やかな黄色をしているのをご存知ですか?その黄色の樹皮に薬効があり、弊社の百草、百草丸の主成分である生薬オウバクです。

  

 国内産のオウバクは入手が年々困難となっています。そのような中、弊社では「キハダ一本から買います活動」を開始しています。キハダをご提供いただける方があったら、弊社社員が自分たちで山に入り、キハダの皮をむけるようになろう、と考えたのが、皮むきを始めた理由です。2021年6月30日に木祖村の山林で専門家の方から皮むきの方法を教えていただき、そこから毎年、ご提供いただく方があるたびに、社員が皮むきをさせていただいています。

    

 今回のキハダは、開田高原の川沿いに生育した大変立派なキハダでした。所有者の方は、今から30年ほど前、当時の弊社がお配りしていた苗木を手に入れ、植樹していただいたとのことです。それを教えていただいた時に、ご縁の巡り合わせに驚くとともに、感謝の気持ちで一杯となりました。キハダの結ぶご縁はいつも有難いものばかりです。

  

 さて、キハダの皮むきは、なぜ6月の梅雨時に行うのでしょうか?これは雨の多い時期は、木が水を沢山吸い上げ、皮が簡単にむけるためです。茶色いコルク質の周皮(外側の皮)と黄色の樹皮(内側の皮)の間、そして黄色の樹皮と材の間がすぐに離れます。そしてその間には水が通っていることが分かります。

  crude_drug_230701_kihada_4.JPG

<真ん中が材、黄色が内側の樹皮である生薬オウバク、茶色が外側の樹皮>

  

 6月24日の皮むきの当日、晴れて開田高原に爽やかな風が吹いていました。前日キハダを伐倒した際は、大雨でしたのでほっとしました。

  

 9時前から弊社社員は準備に取り掛かりました。大きなキハダの丸太を皮むきしやすい平らな場所に移動し、キハダの情報を記録しました。今回6本のキハダの皮むきをさせていただきました。メスの木が3本、オスの木が3本でした。樹齢を数えると30~40年で、一番太いものは胸高直径が長径で40cmもありました。伐倒の際に、メリメリっ、ミシミシっと大きな音を立てて倒れた光景を忘れることができません。丸太の移動は一仕事で、弊社の男性社員4名で取り掛かってもびくとも動かないものもありました。

  

 10時、参加者の皆様が集まられ、キハダ皮むきを開始しました。最初に弊社社員より、皮むき方法をご説明し、皆様で作業に取り掛かっていただきました。外側の皮をむいた時に出てくる鮮明な黄色の皮に大変驚かれ、わーっ、すごい!と大きな声が上がりました。何度皮むきを行っても、その黄色の鮮やかさには驚き圧倒されます。そして、黄色の皮を材から取り外す際、シューっと音がします。今回のキハダは材も白く、神々しいほど美しい様子でした。黄色の皮も、白の材も、みずみずしくキラキラとしていました。何ともいえない、命の輝きを感じました。

  

 今年は、初めて外部の参加者にお集まりいただきキハダ皮むきを実施しました。信州大学農学部の先生、学生の皆様、テキスタイルや染色の専門家の皆様、自然のものを用いてアート作品を作られる方、木曽の地で宿を営みながら御嶽山の信仰について学ばれている方、和ハーブを研究される方、薬剤師の方、他、多彩な方々が参集してくださいました。皆様が皮むきをしながらお話されることは、私共には思いつかないこともあり、大変興味深いものでした。キハダは古くから、薬のみならず、その黄色から衣服や和紙の染料にも用いられています。その実は木祖村ではキハダ餅として食べられ、また材は漆工芸などにも用いられます。利活用の方法は異なっても、自然の恵みに感謝し、健やかな暮らしに使わせてもらう、という視点では、ルーツは同じ、ということを改めて感じる機会となりました。

   

 皮むきをさせていただくキハダと相対すると、生きているキハダの命をいただいて、百草、百草丸などの薬づくりを行うことの責任と感謝を感じます。そして、キハダの皮のみならず、全ての部位を余すところなく活用したい、何も無駄にしたくない、との気持ちがもくもくとわいてきます。更に現実的な観点でも、利活用方法を広げることが、キハダの収益性につながり、キハダをご提供いただく方々のメリットとなります。これが巡り巡ってキハダを伐りオウバクを提供いただく方が増えるかもしれない、ということにもつながっていきます。この循環を作り出すことも、私どもの責任の一つです。多くの皆様の知恵とご協力をいただいて、何とか実現していきたい、との思いを新たにしました。

  

 今回のキハダ皮むきを行うにあたり、本当に多くの方々にご協力いただきました。心より感謝しております。

 

crude_drug_230701_kihada_3.JPG<今回皮むきをさせていただいたキハダの切株。内側の樹皮の厚みは1cm程度、大変立派でした>

crude_drug_230701_kihada_2.JPG

<力自慢の弊社社員が4人で取り掛かっても持ち上がらないキハダの丸太>

crude_drug_230701_kihada_5.JPG

<皆さんが懸命に皮むきをしてくださいました>

crude_drug_230701_kihada_6.JPG

<作業後に。ご協力ありがとうございました>


日野製薬オンラインショップ

>>会員登録いただくと生薬ブログ最新情報をメルマガにてお届けします!メルマガ登録で更に300ポイントプレゼント!