薬草の花

ネムノキ(合歓木)【8月】

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夏の夕方、独特の風情
(写真①:真夏の夕方に開花する。葉は夜間閉じられる)

芭蕉は奥の細道で「象潟(きさがた)や雨に西施(せいし)がねぶの花」と詠んだ。梅雨明け間近の雨に濡れた合歓(ねむ)の花もよいが、真夏の暑くけだるいタ暮れの中で咲く方が、この花の姿にマッチしていると私は思う。花は多数の雄蕊(おしべ)よりなっていて、遠目には淡いピンクの雪洞(ぼんぼり)のように見える。優しげで、そしてはかなげで、日本的な情緒を感じさせる花である。


葉柄、羽片、小葉の付け根の関節はよく発達していて、明暗にたいして敏感に反応して、睡眠運動をする。典型的なのは同じ仲間のオジギソウで、この花は触るだけで葉を閉じることは私たちに馴み深い。ネムノキの由来は「睡眠運動をするから」といわれるが、もうひとつの理由は「春の芽吹が遅いことから」との説もある。実際に、ネムノキは枯れたと思っていると、五月下旬になってようやく芽吹く寝坊助(ねぼすけ)である。

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(写真②:花は長さ2~3センチの糸状の雄しべ集合体)


樹皮は合歓皮(ごうかんひ) で、サポニンやタンニンが含まれ、サポニンのアルビトシンには子宮収縮作用があると報告されている。漢方では不安感やうつ状態、不眠に用いるが 日本ではネムノキの葉を乾燥したものが抹香として利用されており、何か精神安定作用を期待して使われたのではないかと思うと興味かある。


また、日本の民間療法では腫れ物や打撲傷、関節痛に合歓皮の煎液で患部を洗ったり、浴用剤として使用された。


Albizia julibrissin マメ科ネムノキ属 別名●ネムリノキ 生薬名●合歓皮
【ミニ図鑑】葉は昼夜の明暗により就眠運動を起こし開閉する ▶花期 七~八月


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(写真③:樹皮は生薬「合歓木」となる)


出典:「信州・薬草の花」(クリエイティブセンター)

   市川董一郎(文)栗田貞多男(写真)


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