薬草の花
シャクナゲ(石楠花)【12月】
※シャクナゲの花期は5月~7月です
亜高山から山地に数種が自生
(写真①:県内の深山高原に自生するアズマシャクナゲ)
シャクナゲはアセビなどと並んで、ツツジ科の有毒植物のひとつとして知られる。長野県内にはシャクナゲが美しく咲く山は多く、その開花をセールスポイントにしている地域は多い。県内では、初夏に標高千五百メートル前後の山に登ると、多くの山でアズマシャクナゲの淡赤紫色の花が観察できる。それより標高の高い北アルプスなどの山々では、花の色がもっと淡いハクサンシャクナゲやキバナシャクナゲが一般的である。さらに、長野県西部、特に御嶽山周辺では、花の赤紫色がアズマシャクナゲより濃いホンシャクナゲがみられる。シャクナゲの仲間のほとんどは、樹高が人の背丈ほどで適度で、厚手の葉も美しく、この花を好む人は多い。
葉と枝先は生薬「石南葉(せきなんよう)」で、民間では利尿薬として用いられる。強壮、鎮痛などの目的で漢方薬処方に混ぜて使われることもある。成分には痙攣性の毒性を持つジテルペン化合物のグラヤノトキシンやロドデンドリンが含まれる。これらは痙攣性の有毒物質で、中毒量では嘔吐、痙攣、麻痺などを起こすので、不用意に用いるべきではない。
(写真②:より高標高にみられるハクサンシャクナゲ。花色は清楚な白)
日本固有のシャクナゲは、高冷地でのみに生育する種か多い。山で美しく咲く姿を見て、 つい抜き取って家で育てたい欲望にかられるが、平地ではうまく育たないことが多い。やはりシャクナゲは、自分の足で山に登って楽しんでほしい。最近はヒマラヤ原産の西洋シャクナゲの多品種が、園芸店の店先に並ぶようになった。育て方のコツは、土壌の排水をよくしてよく根を張らせること、半日陰で風通しのよい場所に置くこと、さらに、水やりは極力控え根腐れさせないようにすることである。
Rhododendron.sp ツツジ科ツツジ属 生薬名●石南葉(せきなんよう)
【ミニ図鑑】県内にはアズマ、ハクサン、キバナ、ホンシャクナゲが自生する。
▶花期 5月~7月
(写真③:高山性のキバナシャクナゲ。樹高はわずか30~50センチほど)
出典:「信州・薬草の花」(クリエイティブセンター)
市川董一郎(文)栗田貞多男(写真)